暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 6
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た髪を掴み。
 肩の辺りでざくっと切り落とした。

 よ、良かった、翼まで切らなくて……。
 いえ、翼は生物が相手じゃないと物理的傷害を受けないけれど。

「私は天神(てんじん)の一族最後の一柱、最後の(かんなぎ)として、神々のご意思に従うわ。もしもホリードさんと結婚するなり旅へ出ろと神託が下るならそうするし、貴方と結婚しろと神託が下されても私はそれに従う。でも、ごめんなさい。神々の命令だとしても、すぐに気持ちを切り替えることまではできない」

 剣をエルンストに返して、髪を結んでいるリボンを解いた。
 それをエルンストの右手首に巻いて、結ぶ。

「今は貴方の気持ちを受け取ることはできません。それでもいつか、貴方を想える日が来たら。その時、貴方がまだ私を好きでいてくれたら。もう一度このリボンで私の髪を結んでください」
「……残酷なことを言うね。君は」

 泣きそうな顔で苦笑するエルンストを見上げて、私も苦笑いを返す。

「解ったよ、マリア。君の気持ちを預からせてもらう」
「うん。ありがとう、エルンスト」

 リボンを巻いた手首を、自身の胸にそっと抱いてうつむくエルンスト。
 ふと、彼から視線を横へずらすと。
 朝見たままのホリードさんが、カンテラをやや高めの位置に掲げ。
 私達二人を見て、心から嬉しそうに微笑んでいた。



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