解かれる結び目 6
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畏まられながら中庭を連れ出され。
林に入ってお屋敷の方向へ、山頂の方向へと歩いていく。
……どうして廊下を使わないの?
お屋敷へ戻れって言ったのは貴方なのに、どこへ向かってるの?
硬い表情のエルンストが、私を半ば強引に引きずって。
辿り着いたのは、誰も居ない裏門。
閉ざされた鉄格子の扉に背中を押し付けられ。
正面からエルンストの体が覆い被さって、私の動きを封じる。
「エルンスト?」
「僕は、君の伴侶候補だ」
「…………え?」
伴……
え? 何?
「神官と騎士の総会議で何年も前に決定していた。君が人間の法律で正式に結婚できる年齢になるまでは伏せていようとも決まってたけど」
「………………うそ」
見上げた双眸が、すっかり暗くなった空の中で微かに青く光る。
細めた目蓋が形作るのは、自嘲めいた微笑み。
「不思議だとは思わなかった? 礼拝堂やお屋敷の外で君と頻繁に会ってる僕が、何の戒めも受けていないこと。確かに、人前では極力敬語を心掛けていたけど、僕は神殿騎士として特別な位や権利を授かってるわけじゃない。普通に考えて、君の傍に居ること自体が不自然なんだよ」
「それは、貴方が私の幼馴染みで、友達だから」
女神である私が、貴方の傍に居たいと願ったから。
「うん。僕が正式な伴侶候補に選ばれた理由もその辺りにあるんだと思う。でも、僕が候補に名乗りを挙げなければ君の願いであっても通らなかった。一族の血を絶やさない為に君は絶対不可欠な存在。不要な懸念は排除されて然るべきだ」
一族の血を絶やさない為……不要な、懸念!?
「神々からの指示に、そんな話はないわ! 人間が勝手に私の結婚を決めて良い筈ない! それは神々がお決めになることよ!!」
そうよ。
私の未来は、天神の一族の力をどう扱うかは、神々が決めること。
だから、私は恋を諦めて……
「たとえ神々の指示がなかったとしても、結婚はできるんだよ。実力行使。『既成事実』っていう暴力でね」
「…………ッ!?」
なにを……エルンストは、何を言ってるの?
それは神々の意に背く行為だわ。
私に。人間の都合だけで、この巫に、子供を産めと言ってるの!?
神々に同意なんか求めてない!?
「だけど僕は、候補から外されるかも知れない」
「え?」
「神々の祝福を授かった彼が現れたから。神官側は、君と彼の間に生まれる子供こそ、次世代の巫に相応しいと言ってる」
……なに?
なんなの、これは?
私が知らない場所で。
神々が見ていない所で。
いったい、何が決められてるの!?
「私は!」
「僕はマリアが好
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