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逆さの砂時計
解かれる結び目 6
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だ紫色に変わる頃。
 神殿騎士達が、中庭の各所に設置された松明(たいまつ)に火を(とも)し終えたようだ。
 神殿へ侵入するなら、今が好機。

 あの三人から話を聴いてみたい。
 歌で聴いた『冒険譚のあらすじ』じゃなくて。
 ホリードさん達が見てきた世界への感想とか心境とか、内面的な話を。
 あの三人に直接会って、表情や仕草を見ながら聴いてみたい。

 見回りの時間は大体決まっているから。
 それさえやり過ごせば、神殿に近付くのは難しくない筈。
 慎重に、バレないように移動しよう。

 お屋敷の中では、普段通りに振る舞う。
 このくらいの時間ならたまに出歩いてるし、不審には思われない。
 問題は、お客様が居る時に、お役目以外の目的で神殿に入ること。
 大神官様に見つかろうものなら、女神の品位を損なう行為は慎めと言って明日のお役目の時間になるまで自室に監禁されかねない。
 気を付けなきゃ。

 廊下をちょっと歩いたところで、周囲の無人を念入りに確認。
 遠くに立っている守衛達の隙を突いて、中庭の植物園へ走り込む。

 建物の外は侵入者への警戒が厳しいから、廊下を往き来する為の通用口と正面入り口は使えない。
 神殿に入るなら、狙いは礼拝堂の祭壇裏に直通している中庭側の中央口。
 パッと見では判りにくい場所にあるし、守衛も配置されてない。
 扉には常に鍵が掛かってるし、その鍵はペンダントにして私が持ってる。
 暗闇に紛れていけば気付かれないわ。
 多分。

 空が刻々と落ち着いた色調に変化していく。
 できるだけ噴水寄りに、素早く細かい移動を続けて。

「ダメだよ、マリア」
「!? エルンスト?」

 どうして貴方が、中央口の前に立って……

「君は、女神としてここに来たの? それとも、女性として?」

 ?
 女性として?

「意味が、解らないわ。私はただ」
「ダメだよ。君は人間に関わるべきじゃない。お屋敷へ戻って」

 ……私が神殿に来た目的を知ってる?
 私がここに来ると分かってて、ずっと見張っていたの?
 何故?

「お願い、エルンスト。私はただ、あの人達の話を聴きたいだけなの」
「聴いて、それで? どうするの?」
「どうって」
「一緒に行きたい?」
「え?」
「彼らと一緒に、神殿を出て行きたい?」
「三人と、一緒に……?」

 そんなこと、考えてなかった。
 ただ、あの人達の話をもっと詳しく聴けたら、神々に何を告げられても、頑張れる勇気を貰える気がして。
 それだけのつもりで。

「おいで、マリア」
「え? ま、待って、エル……」
「来るんだ」

 何? 掴まれて引っ張られる手首が痛い。
 神殿側の通用口を護る守衛二人に
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