星の瞬きは未だ届くことなく
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彼は決して認めん。
故に、彼と“話し合い”が出来るのは我らだけなのだ」
言い方に違和感を覚えた。なにか違う。話し合いなんて高尚なモノではない。
少し考えて、納得したのか掌をポンと鳴らした。喉が自然と震えていた。可笑しくて可笑しくて。
「くくっ……“話し合い”、ではないな。やはりこれが一番しっくりくる。
私と白蓮殿が彼とするのは……」
僅かな間。じ……と絡んだ視線の先、黒髪が風でゆらりと揺れる。
「ただの“宴会”だ。互いの腹の内を割って話して、泣いて怒って笑ってふざけ合う、それだけの」
そうならなかったことなど過去には見当たらなくて、これから先も彼と白蓮と寄れば真面目な話など空の彼方に消えてしまう気がした。
余りに抜けた答えにがっくりと力の抜けた愛紗は、呆れのため息を零しながらも何処か納得した様子。
「……乱世での大事を宴会と言って退けるのはどうかと思うが……すまない。彼のことは……任せる」
「なに、いいさ。愛紗も桃香殿も夢を追いかけるべきだ。私達はそんな二人が好きで、側に居たいと思えるのだから。夢を追いかけるのを応援し、支えるのが友の役目。
出来ることを出来る範囲で、不足はそれぞれが助け合うべし……なんと、私は最初から劉備軍の在り方にばっちり嵌っていたようだ」
「意地っ張りな部分さえなければ、だろう?」
「ふ、わがままと言い換えればお前達と同類ではないか」
「ああもうっ、ああ言えばこう言うっ!」
いつも通り飄々とした態度で茶化す星に、愛紗は不機嫌そうに眉を顰めた。ただ、別に本気で怒っているわけではないのも星とて分かっていた。
話も丁度区切れた。今は彼のことはおいておこうと愛紗が思考を切り替えようとした時……僅かに空気が変わった。
「ただなぁ……」
遠く、星は木々の切れ間から見える空を見上げていた。何かを思い悩むように。
数瞬の沈黙は言葉を選んでいるのかいないのか、星は額から汗が一滴落ちてから漸く口を開いた。
瞳に浮かぶのは淡い色……では無く、激情の宿る炎だった。
「……彼は張コウの願いの為に命を賭けたと聞く。たった一人で、敵の罠があると分かっていながら、裏切られぬやも知れんというのに」
愛紗は茫然と、行き場の無い怒りを浮かべる星を見つめた。
――普段からこんな感情を出さない星が、何故これほどまでに……。
愛紗は知らない。
もう二度と戻ってこない一人の少女が、彼のそんな生き方を許さなかったことも、二人で咎めたことも。
――牡丹の代わりという訳ではないが……
「二度も同じ事を繰り返すような大バカ者は引っぱたいてやらねば気が済まん」
命を賭けることと、命を使い捨てることは違う。
彼の在り方は後者、それも星は
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