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戦国異伝
第二百二十三話 信貴山城攻めその十二

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「そうした日でした」
「そうであったな」
「因果、いや」
 ここでだ、筒井ははっとなって言った。
「まさか」
「この日をあえて選んでじゃな」
「死んだのでは」
「だとするとあ奴は死に場所を探しておったな」
「そして今日ですか」
「死んだ、そうなるのか」
 信長は深く考える顔で述べた。
「あ奴はそれで罪を償ったのか」
「そうなるのでは」
「左様か、では屍は残っていないにしても」
 それでもとだ、信長は周りに命じた。
「あ奴にはよい墓を作ってやれ」
「はい、では」
「その様に」
 家臣達も応えた、こうしてだった。
 信貴山城での戦は終わった、完全に。信長は天守の建てなおしと新たな城主に羽柴秀長を命じそのうえで安土に去った、その戦の後でだった。
 信長は安土においてだ、帰蝶に言った。
「天下はこれで収まった」
「奥州の諸大名の方々も」
「うむ、織田家に降った」
 その全てがだ。
「蝦夷の松前家までもがな」
「ではこれで」
「天下は一つになった、しかし」
「それでもですね」
「御主も感じておるか」
「はい」
 帰蝶は信長に対して確かな声で答えた。
「何か。天下の裏に」
「おるな」
「得体の知れぬ者達が」
「その者達が何をしておるのか」
「それがわかりませぬし」
「何者かわからぬ」
「天下は一つになり治める仕組みも整っていますが」
 しかしとだ、帰蝶も言うのだった。
「その裏にいる者達を」
「どうにかせねばならぬか」
「どうされますか」
「わからぬ、何者かわからぬのでは」 
 信長にしては珍しい迷いのある顔だった、迷いというか戸惑いであろうか。その顔で妻に対して言うのである。
「わしとてな」
「どうしようもありませぬか」
「どうもな」
「ではここは」
「それが何者かな」
「確かめますか」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「どうするか決める」
「そうされますか」
「帝にお話する、これよりわしは天下の裏を確かめる」 
 そしてとだ、信長は語った。
「そしてどうするか決めたうえでな」
「天下をですね」
「治めるとしよう、ではな」
「それではですね」
「都に行く」
 つまり朝廷にだ、帝に会う為にというのだ。
「そうしてくる」
「では」
 こうしてだった、天下を定めた信長は信貴山で見たものを思い出しつつだった、都に上った。そうして朝廷に参上するのだった。


第二百二十三話   完


                          2015・4・8
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