第二百二十三話 信貴山城攻めその十一
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「そういうことでな」
「さすれば」
池田は信長のその言葉に頷いた、こうしてだった。
松永の家臣達は解き放たれてだった、彼等はそのまま大和の寺にそれぞれ入ってだった。そこから動かないことを誓った。
そしてだ、信貴山城にだ。
松永は一人入り天守に登った、その手には平蜘蛛がある。
その平蜘蛛に火薬を詰めた、そうしてから。
一人だ、笑って言った。
「織田家は居心地がよかったが、仕方ない」
少し動きながら言っていた。
「所詮まつろわぬ者ということか、信長様にも名残惜しいがお別れじゃ。じゃが信長様お気をつけ下され」
信長の方を見て言うのだった。
「それがしの様な者はおりませぬ、まつろわぬ者は上様を何処まで狙っております。そろそろ確かにお気付きになれられると思いますが」
それでもというのだ。
「その前に寝首をかかれぬ様。文は置いておきましたのでお読み下さい」
ここまで言うとだった。
火打石を出してそこに火を点けてだ、茶器もろとも。
天守のその最上階を吹き飛ばさせた、その轟音に殆ど全ての者が驚愕した、そしてその直後に口々に言った。
「まさか」
「弾正め、天守でか」
「自害したというのか」
「火薬で」
「では」
すぐにだ、多くの者が察した。
「平蜘蛛に火薬を入れて」
「そのうえでか」
「爆死したというのか」
「何という派手な自害か」
「腹を切らずにそうしたか」
「その様じゃな」
信長はその天守を見つつ言った、最上階からの火は下の階に移っていってだ、美麗な天守を炎で覆おうとしている。
「どうやら」
「降らずに」
「自害するとは」
「弾正め、平蜘蛛を殿に渡すまいと」
「そこまでして」
「いや、わしは平蜘蛛はいらなかったわ」
信長は家臣達に言った。
「それはあ奴もわかっておった」
「平蜘蛛、即ち松永殿のお命をですな」
利休が信長に言って来た。
「渡すつもりで降れと」
「そうした意味で言ったのじゃ」
「左様でしたな」
「あ奴が最もわかっておったが」
「ではあのご自害は」
「どうしても降れぬ訳があったか」
これが信長の見立てだった。
「それで、であろうか」
「松永殿は降られなかった」
「そう思うがな」
「ですか」
「しかしな、何はともあれな」
「はい、松永殿は」
「間違いない、あれは弾正がしたことじゃ」
燃える天守を見ての言葉だ、既に天守の全てが炎に覆われている。
「あ奴はこれでな」
「ご自害為されましたな」
「平蜘蛛と共にな」
死んだというのだ。
「惜しい男じゃったが」
「そういえば今日は」
ここで筒井が言った。
「あの日でした」
「弾正が東大寺を焼いた日じゃな」
「はい、大仏を」
「前にそうした日じゃったな」
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