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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
35.それは違うぞ!
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ロモノで……それでも、アニエスから見た3人は確かに眩しかった。



 = =



「はぁぁぁぁ〜〜〜………よ、よかった……アニエスは無事なんだね……」

 日の沈んだ街中の一角を歩くその少年は、ねこから受け取った手紙の内容を確認して深い安堵のため息をついた。

 ティズがアニエスの姿が見えない事に気付いたのが夕食直前。
 宿中を探しても見つからず、宿の人も彼女の姿を見ていないと知ってたのがそのすぐ後。
 それから、ティズは「今度こそ何かのトラブルに巻き込まれたのでは!?」との思いに駆られて食事もとらずにずっとアニエスと、同時に姿を消したエアリーを探し回っていたのだ。ねこが届けてくれた手紙を見るまで、ティズは全く生きた心地がしなかった。

 詳しい事は書かれていないが、急を要する雰囲気でないことから、大事には至らなかったのだろう。

 ティズにとって、世界を救う手がかりを持つエアリーは勿論、アニエスもまた世界を救う希望だ。
 でもそれ以上に、気丈な彼女の華奢な体がその希望の重さに耐えられるのかをティズは気にしている。とてもではないか彼女が戦い向きには思えないし、しかもその意志の強さから放っておけば無茶をする事が目に見えている。

(僕はエアリーと約束したんだ。この悲劇を、エアリーと一緒に止める。アニエスだってそうだ。目的は同じ筈だ……今は喧嘩ばかりだけど、いつか分かってくれる日が来る)

 彼女も大切な人を失ったと聞いている。ならば、彼女にだって少しは分かるはずだ。
 大切な人を失った時の、胸を突き刺されるような痛み。終わりの見えない悲しみ、虚無感、絶望、失望……自分はなんて無力なんだと思い知らされる瞬間が。

 確かにティズにはあの大穴を取り除く使命に関わる宿命などない。しかし、ティズは思う。きっとエアリーに出会わなかったとしても、自分はアニエスを護ろうとしただろう、と。なぜなら、絶望に立ち向かう彼女の姿は輝かしくて、綺麗で……憧れるほどに強い意志を持っていたから。

 だから、ティズはアニエスのことを放っておけない。
 彼女が傷つくと知っていて素知らぬ顔など出来ない。
 エアリーがティズの中に何かを見出したように、ティズもまたアニエスの中にある何かを、守らなければいけないと感じた。
 難しい事は分からない。だから、希望だと思ったものは全て守りたい。

(我ながら単純な動機だなぁ……でも、僕はそれしか思いつかないんだ)

 明日はアニエスに分かってもらえるだろうか――そう思いつつ、ティズは身を翻して宿へ向かった。


 しかし、彼らを取り巻く環境にも大きな動きがあった。



「あのナイフ……間違いない。ヘファイストス・ファミリア製の最高級品だ……リリなら出来る。リリなら
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