第二百二十三話 信貴山城攻めその九
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松永に対してだ、鷹揚に答えた。
「城から兵も家臣達も出した後でじゃな」
「そうです」
「ならよい」
兵も家臣もいなくては籠城出来ない、天守に登ってもそれだけだ。そうした状況になるからなのだ。こう答えたのだ。
「ではな」
「では」
「その様にな」
「さすれば」
こうしてだった、松永は降ることになった。すぐに兵も家臣達も城から出たがその彼等の服や具足、それに旗や武具の色を見てだ。
信長もだ、いぶかしんで言った。
「またか」
「はい、またですな」
「またしても」
明智も蒲生もいぶかしみ応えた。
「闇の色ですな」
「闇の具足や服ですな」
「本願寺の者と同じく」
「そうですな」
「うむ、そうじゃな」
信長も彼等に応えた。
「これはな」
「はい、これは」
「あの者達は一体」
「度々見ますが」
「その素性は」
「それがしもはじめて見たのです」
雑賀が信長に言って来た。
「上様と戦ったその時に」
「御主もか」
「本願寺の色は灰色です」
「そうじゃな」
「はい、本願寺の色は昔からそう決まっています」
灰色、それにというのだ。
「悪人正機の考えに基づき」
「悪人は何か、じゃな」
「人はどうしても罪を犯しです」
「それを自覚するのが悪人じゃな」
「悪を黒とすれば」
さすればというのだ。
「それを自覚し悔いてよくなろうとするのなら」
「灰色じゃな」
「そうなりますので」
それ故にというのだ。
「本願寺の色は灰色です」
「そうなるからであったな」
「はい、だから灰色なのですが」
「闇の色はないな」
「断じて」
絶対にというのだ。
「その様なものは」
「そうじゃな、そうした色の本願寺の者はいないな」
「そうでした、それがしも不思議に思っていまして」
「顕如殿もじゃな」
「顕如殿も他の方も」
全ての者もだった、本願寺の。
「おかしく思われていました」
「そうじゃな」
「おかしなことでした」
「そしてじゃ」
さらに言う信長だった。
「わしに何かある時はな」
「常に、ですな」
今度は長政が言って来た。
「闇が関わってきていますな」
「勘十郎が二心を抱いた時も」
「そして父上が兵を動かせと言われた時も」
「比叡山でも高野山でも都でもな」
そうした場所での戦いの時もというのだ。
「常にじゃった」
「闇の服なり具足を着た者達ばかりで」
「何であろうのう」
信長はいぶかしみつつ述べた。
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