第二百二十三話 信貴山城攻めその七
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「そう伝えよ」
「それでは」
「弾正が来てじゃな」
「こちらから主な者が出て」
「ではこちらもじゃ」
織田家の方もというのだ。
「主な者達を連れて行く」
「では」
こうしてだった、話が整ってだった。
信長は松永と茶の場で話をすることにした、城の外で。そしてすぐに茶の場が整えられてそうしてだった。
双方そこで茶を飲んだ、まずは信長が来て。
松永も来てだ、それから。
松永は信長を主、客の座に置いてだ。そうしてだった。
自ら茶を淹れた、その茶を観てだった。
毛利と服部がだ、こう言った。
「殿、まずは」
「我等が」
「毒見をします」
「この男のことですから」
信長を守る様にしてだ、二人は松永を見据えつつ言うのだ。
「ですからどうか」
「ここはです」
「まずは我等が」
「我等が毒見をします」
「そうです、殿。こういう時こそです」
「用心をせねば」
今度は柴田と林がだ、松永を見据えつつ言った。
「毒なぞ入っていては」
「恐ろしいことになります」
「ははは、毒なぞ入れてはおりませぬぞ」
「誰が信じられるか」
佐久間が忌々しげにだ、松永の笑っての言葉に返した。
「御主の言うことなぞな」
「随分なもの言いですな」
「随分も何もあるか」
佐久間は今にも松永に腰にものを抜かんばかりだった、茶の席なのでそれは持ってはいないがすぐ傍に軍勢が控えている。
そのうえでだ、松永を見据えて言うのだ。
「御主、遂に謀反を起こしたな」
「ははは、確かに」
「認めたではないか、殿やはり」
滝川も佐久間と同じく松永を見据えつつ信長に言う。
「こ奴、何としても」
「いや、だから待て」
信長は放っておくと松永に今でも向かわんばかりの家臣達に穏やかな声で言った。
「この茶に毒は入っておらぬ」
「そうなのですか」
「それは」
「そうじゃな、利休」
信長はここで茶の席にいる利休に問うた。
「この茶には毒は入っておらぬな」
「はい、若し毒が入っていれば」
利休は信長の問いに彼と同じく穏やかな声で答えた。
「匂いがしますし。それに」
「それにじゃな」
「茶を淹れる時に手や目、身体の動きに出ます」
そこはどうしてもというのだ。
「例え微かにではあっても」
「茶の他のものを淹れればな」
「心に出ます、しかし」
「今の弾正はじゃな」
「はい、出ませんでした」
全く、というのだ。
「ですからこの度はです」
「弾正は茶は淹れてはおらぬ」
「それがし、茶のことならわかります」
このことには絶対の自信があった、それ故の言葉だ。
「ですから」
「そういうことじゃな。ではな」
「どなたもご安心下さい」
柴田や佐久間達にもだ、利休は穏やかに述べた。
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