巻ノ十二 都その十三
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「あまり貰っておらぬ」
「寺にお布施をしました」
伊佐はこちらだった。
「説法をしていましたが」
「それがしも神社に賽銭をかなり入れてしまった」
筧も申し訳のなさそうな感じである。
「神主殿は喜んでくれたが」
「わしは貧しい者達に恵んだ」
霧隠もだった。
「残したしたがな」
「何じゃ、皆銭を大事にせぬのう」
猿飛は仲間達の話を聞いて笑って言った。
「それでは銭は貯まらぬぞ」
「そう言う猿飛殿も少なかったですが」
「通りがかった子供達に小遣いをくれてやったわ」
こう伊佐に答える。
「だからな」
「猿飛殿もですね」
「うむ、あまり持っておらぬ」
「全く、皆そうとはな」
霧隠は首を捻って苦笑いになった。
「わしもそうじゃが」
「ははは、我等は銭を儲けるのには向いておらぬな」
穴山も笑って言う。
「まあ宿屋と酒の銭はあるか」
「それだけあればよい」
海野も言う。
「元々長者になるつもりはないであろう」
「そちらには興味がない」
由利もこう言う。
「だから皆こうじゃな」
「そうであるな、ともかくじゃ」
幸村がまた言った。
「銭はこれだけあれば充分、ではな」
「はい、今宵はですな」
「酒ですな」
「皆で飲もうぞ」
こう話してだった、そのうえで。
一行はそれぞれが儲けた銭で宿賃を払い酒も飲んだ、そうして都での夜を全員で心ゆくまで楽しんだのである。
巻ノ十二 完
2015・6・25
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