3部分:第三章
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第三章
「全く。昔から変わらんのう」
「だからあんた誰なんだって」
おみよさんはまた問います。
「あたしゃあんたなんか知らないんだけれど」
「ぬらりひょんじゃ」
お爺さんは答えました。
「ぬらりひょん!?」
おみよさんはそう名乗られてまた首を傾げました。
「渾名かい?また変わった渾名だねえ」
「渾名ではない」
お爺さんは言います。
「れっきとしたわしの名前じゃ」
「変な名前だね、また」
「実はそうではないのじゃ」
しかしお爺さんはその言葉をはっきりと否定しました。
「何せわしは人間ではないのじゃからな」
「じゃあ何なんだい」
おみよさんは堂々とそう名乗ったお爺さん、いえぬらりひょんに対して尋ねます。
「人間じゃなかったら何だい?化け物かい?」
「まあそうじゃ」
ぬらりひょんは答えました。
「人にはそう呼ばれておるな」
「言うけれど化け物に会ったことはないよ」
おみよさんはそう返します。実際にこのぬらりひょんに会った記憶もないのです。
「そもそも何時会ったんだい、あんたに」
「だから子供の頃じゃ」
ぬらりひょんは答えます。
「家の中で何度も会っているじゃろうが」
「はて」
それを言われてまたしても首を傾げてしまいます。
「そうだったっけ」
「わしはな、いつもこの時間に出て来るのじゃ」
ぬらりひょんは語ります。
「そしてな。家にあがってまあぶらぶらとするのじゃ」
「それだけかい?」
「それだけじゃ」
そう答えを返します。
「人の世界でするのはそれだけじゃな」
「何しに来てるんだい」
おみよさんはそれを聞いて何か変な気分になりました。もっとはっきりと言えば訳がわかりませんでした。
「そんなことをするだけかい」
「うむ」
「わからないねえ」
そしてその気分を言葉にも出しました。
「そんなことをして何になるんだい」
「特に意味はない」
ぬらりひょんの方もそれは認めました。
「あら」
「そもそもわしは化け物じゃぞ。妖怪じゃぞ」
自分でもそれを言います。
「それで意味なぞ求めるでないわ。そんなことはどうでもいいのじゃ」
「どうでもいいのかい」
「そうじゃ。だから気にするな」
かなり都合のいい話ですがそれは結局は人間から見た理屈でしかないのでしょう。自分でも化け物だの妖怪だの言うぬらりひょんにはそんなことはさして意味がないのです。
「それでじゃ」
自分のことはそう言ってから話を戻してきました。
「おぬしのことじゃ」
「で、あたしだね」
「左様。全くもってけしからん」
あらためておみよさんに対して苦い顔と声を向けてきました。
「子供の頃と同じではないか」
「覚えてないね、悪いけど」
「わしはちゃんと覚えておる
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