1部分:第一章
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「おうよ」
すぐに返事を返します。
「その通りだ。悪いか」
「悪いに決まってるじゃないか」
おみよさんもやはり負けてはいません。
「あたしは動きたくないんだから」
「よくそんなんで生きていられるな」
旦那さんもかなり呆れていますがそれでも言います。
「いつもいつもよ。にしてもだ」
「何だよ」
「俺もよくおめえみてえなのと結婚したもんだ」
自分で自分に感心してしまうことしきりです。
「どうしたもんだろね」
「そりゃ決まってるじゃないかい」
おみよさんはそこで言うのです。したり顔で。
「何がだ?」
「あんたはあたしに惚れてるんだよ」
「ほお」
それを聞いた旦那さんは面白げな顔をしておみよさんを見ました。
「そうなのかよ」
「だから今でも一緒にいるんじゃないか」
「まあそうだ」
朝から感心することしきりです。何か目から鱗が落ちたような気持ちです。
「そうだよな。まあ嫌いじゃねえ」
「不満があるかい?我慢出来ない程のが」
「それはあるぜ」
旦那さんはその言葉にはすぐに言い返します。
「だからこうやって文句言って叱ってるんじゃないか」
「けれどあたしは動かないからね」
おみよさんもてこでも動こうとしません。その頑固さだけは本当に見事なものです。子供達もそんなお母さんを見て何かくすくすと笑っています。
「気が向くまで」
「気が向くまでか」
「そうさ」
そう言って食べ終えたお椀とお箸を置きました。
「ご馳走様」
「しかしよ」
旦那さんは言います。
「地震でも起こったら別だろ」
「そりゃその時は逃げるさ」
これは当然と言えば当然です。だって誰も死にたくはないのですから。これだけはおみよさんも他の人と同じなようであります。
「けれどそれ以外はね」
「寝て過ごすっていうのかよ」
「最低限のことはしてるだろ。じゃあ御前さん」
そして布団に潜り込みながら旦那さんに言います。
「そろそろ時間だよ」
「ああ、じゃあ行くか」
旦那さんはその言葉を受けて立ち上がります。子供達もです。
「おいらもそろそろ時間だから」
「ああ、寺子屋だったな」
旦那さんはそれを聞いて言います。江戸時代では寺子屋が学校になっていてそこで読み書きと算盤を習っていたのです。子供達は学校がなくてもここで勉強をしていました。
「うん、そうだよ」
「だからあたしもね」
「おう、頑張って勉強して来い」
旦那さんは子供達に優しい声で言います。
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