第1章:平穏にさよなら
第3話「志導緋雪」
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.......。」
「...帰るよ。緋雪。」
葬式が終わり、お兄ちゃんにそう声を掛けられる。小さく頷いて、私達は家へと帰っていった。
「ただいま。」
お兄ちゃんが家に入ると同時にそう言う。...だけど、返事は返ってこない。...お父さんもお母さんも、もういないんだ...。
「ぁ....ぅ...ぁぁ....。」
その事に改めて実感させられると、突然涙が溢れて止まらなくなる。
「.....。」
「ぅぁあ....。」
涙を堪えながらお兄ちゃんに背中を押されてリビングへと向かう。
―――「お帰り。二人とも。」
―――「今日も二人で遊んでいたのか?」
「っ....!」
お母さんとお父さんの幻聴が聞こえた。...それだけ、私は両親が大事だった。その事に気が付くと、今度こそ涙腺は決壊した。
「うぁ...ああああああああああ...!」
「.....。」
ソファーに泣き崩れる。涙が止まらない。声を我慢できない。ただただ、私は泣き続けた。
「あああああ...!お父さん...お母さん....!あぁぁ....!」
「.......。」
泣き続ける私に、お兄ちゃんは黙って背中を撫で続けてくれた。...それだけが、今の私にとって安心できる事だった...。
―――トン、トン、トン
「......ぅ.....?」
ふと、気が付く。どうやら、私は泣き疲れて眠っていたみたいだ。
「....お?緋雪、起きたか?」
「...お兄ちゃん...?」
音のする方を見れば、お兄ちゃんがキッチンで料理をしていた。
「ちょっと待っててくれ。遅めだけど、もうすぐ晩御飯ができるから。」
「晩御飯...?」
そう言ってお兄ちゃんは手際良く...いや、そう見えるだけで所々ミスしながら、料理を盛り付けて行く。
「はい。完成だ。あまり上手く作れたとは思えないから、味には期待するなよ?」
「あ....うん...。」
“いただきます”の合図と共に、私は料理に手を付ける。
「...美味しい....。」
「そうか?それは良かった。」
確かに味は絶品っていう訳ではないけど、十分に美味しく食べれる程には美味しかった。
「....大丈夫だ緋雪。僕が、頑張るから...。」
「お兄ちゃん....。」
もしかして、私を元気づけるために料理を...?
...そういえば、お兄ちゃんは両親を失ってから一度も泣いてなかった。葬式の時だって、私が泣いてしまった時だって、一切涙を流さなかった。
「...
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