第1章:平穏にさよなら
第3話「志導緋雪」
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切る。
「...何かあったの?」
「緋雪.....心して聞いてくれ....。」
お兄ちゃんはそこで間を空けて言葉を放った。
「―――お父さんとお母さんが事故に遭った。」
「........え.....?」
一瞬、その言葉を理解できなかった。
「行きの途中、突然スリップして道路をはずれ、木々に激突したらしい。」
「ぁ...嘘....。」
「...しかも、それだけじゃないんだ。」
いきなり両親を失った喪失感に頭が真っ白になっている所に、さらに追い打ちがかけられる。
「....死体が、見つからなかったらしい。」
「...どう...いう....?」
訳が分からなかった。いきなり事故だと告げられて、しかも死体がないなんて。
「車はぐちゃぐちゃ。それなのに、一切血痕や、死んだ証拠となるものがなかったらしい。」
「なに...それ....?」
聞けば事故の起こった周辺にも痕跡はなかったそうだ。そう、まるで神隠しのように。
「...そして、目撃者の中に不可解なものを見た人がいたんだ。」
「不可解なもの?」
「...曰く、スリップしている時に両親以外の人影を見たとの事だよ。それと、激突する寸前に車内が光っていたように見えたらしい。」
...本当に不可解なものだ...。元々、目撃者も少ないらしく、詳しくは分からないらしい。
「...一応、行方不明扱いにはするけど、生存は絶望的だってさ....。」
「そんな....。」
両親を突然失った喪失感。それは、転生を心のどこかで浮かれていた私を、一瞬で現実に戻すのには十分すぎた。
しばらくして、両親を弔うために葬式が開かれた。...棺桶は空っぽのまま。
「..........。」
周りにはあまり人がいない。両親は特に有名って訳でもなかったので、親戚の人達や近所の人がちらほらいるだけだった。
「..........。」
私は、ただただ呆然と葬式が進んでいくのを見ていた。隣にはお兄ちゃんもいる。でも、私の心はぽっかり穴が開いたようで、目の前の事をしっかりと認識できていなかった。
「....かわいそうに...。」
「まだ6歳と7歳の子供よ?」
「どうやって生きて行くのかしら....。」
葬式に来ている人の何人かが私達を見てそんな事を呟いている。
「っ.......!」
「.....。」
お兄ちゃんにもそれが聞こえていたのか、手や足に力が入るのが見て取れた。
「.
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