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逆さの砂時計
解かれる結び目 5
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てる」


 意を決して答えたら、エルンストの目が驚きに揺らいだ。

 そうよね。私は貴方と出会う前から、この鳥籠の中で安穏と生きてきた。
 それはこれからも変わらないと、私自身も思っていたもの。

 でも、現実は変化した。
 変化、してしまった。

「神々は何も……。でも多分、神殿の外でやるべきことがあるんだと思う。それが怖いの。すごく、怖い。……情けないでしょう? 今更でしょう? (かんなぎ)としては当たり前のお役目が、怖くて堪らないの。死にたくないのよ」

 与えられる立場に慣れてしまった心に、鳥籠の外は広すぎて。
 飛んでおゆきと言われても、翼は(すく)んで動かない。

 自由が怖い。
 自由に付き添う責任が怖い。
 開いた扉の一歩先へ進めば、そこからは誰も助けてくれない。
 自分の翼を信じられない私は、堕ちていく未来に怯えて動けない。

「死にたくない……卑怯でしょう? 神々にもたくさんの人達にも護られて生きてきたのに。自分は死にたくないの。お役目なんて棄てて、誰の目にも映らないどこか遠くへ逃げ出したいと、本気でそう思っているのよ。私は」

 逃げる場所にさえ、心当たりもないのにね。
 こんな私じゃ、嫌われても……仕方ない……

「当たり前だよ、そんなの」
「え?」

 エルンストの両腕が、私の頭を強く抱えて。
 少し、息苦しい。

「僕だって怖いよ。死にたくないよ。誰だって、死にたくはない。そんなの当たり前なんだよ。恥じることじゃない」
「でも」
「良いんだ。怖がっても逃げたいと思っても、耳を塞いでうつむいていても良いんだ。それは、命あるものすべてが持つ本能だ。卑怯なんかじゃない。本当の卑怯っていうのは、恐怖や絶望に負けて自ら命を絶つことだ。君は、そういう逃げ方を選ぶのか?」

 自分で命を絶つなんて、考えてもいなかった。
 ただ怖くて。死にたくなくて。
 そんな、ずるくて醜い私自身が、すごく、嫌で……

「嫌われるかと、思ったわ」
「何故?」
「私は人間と神々を繋ぐ(かんなぎ)で、貴方は神々に仕える騎士で、だから」

 後頭部をさわさわと撫でられる感触がする。

 変なの。
 涙で顔がぐしゃぐしゃだったり、女神の威厳を損なう言動をしてたり。
 誰かに見られたら絶対に怒られる状態なのに。
 くすぐったいとか気持ち良いとか、そんなことをのんきに考えてる。

「そう簡単に嫌いになれるなら、友達なんてしてないよ」
「……友達でいてくれるの?」

 腕を離して微笑むのは、言葉で答えない代わり?

「とりあえず、自室で落ち着こうか。君がそんな顔でうろうろしてたら皆が驚いてしまうからね」
「……ええ。そうね」

 今度は私が、エル
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