7部分:第七章
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第七章
「あれっ、あの人」
「お爺さんに似てるけれど」
「若いね」
「息子さんだよ」
市長さんはこう子供達に教えるのでした。
「あの人はね」
「息子さんなんですか」
「あの人が」
「実はそうなんだよ。そういえばお店の手伝いをしているんだったっけ」
市長さんはこのことを思い出しました。
「修行にね」
「修行にですか」
「へえ」
「ああ、だからだよ」
そしてまたあることがわかった市長さんでした。
「だからなんだよ」
「だからっていいますと?」
「何が?」
「あのピエロはね。お化けじゃないんだよ」
まずはこのことを子供達に話します。
「お爺さんの息子さんだったんだ。そして昔のピエロはね」
「ええ」
「誰だったんですか?」
「今お店にいるお爺さんの若い頃だったんだよ」
こう子供達に語ります。
「昔のピエロはね」
「代々だったんですか」
「そういうことだよ。だから同じ顔だったんだよ」
「お店のお爺さんも」
「ピエロさんも」
「ほら、そっくりだろ?」
またメイクを落としているピエロのおじさんを指差して子供達に言います。
「あの人とお爺さんの御顔はね」
「はい、そうですね」
「皺がないだけで」
お店のお爺さんがそのまま若くなった御顔です。まさに親子のそれです。
「その通りですね」
「あの人は」
子供達にもこのことがよくわかりました。
「それじゃあお化けって結局」
「いないんですか?」
「そういうことだね」
このことを子供達にあらためて言うのでした。
「結局のところはね」
「何だ」
「大騒ぎしたのに」
「ははは、世の中なんてそんなものさ」
がっかりした感じになる子供達を慰めて言います。
「けれどね。皆よくやったよ」
「そうですか?」
「うん。まずは皆で考えて前に出たよね」
「はい、まあ」
「それは」
皆もそれには頷くことができました。
「凄く興奮しましたし」
「それで」
「それでいいんだよ」
そしてこうも言う市長さんでした。
「まずは皆で考えてそして勇気を忘れない」
「勇気をですか」
「人間はね。それが大事なんだよ」
「皆で。そして勇気も」
「いいものを見せてもらったよ」
暖かい声になっていました。
「皆にね」
子供達はがっかりでしたけれど市長さんは満足でした。今回の騒ぎで今の子供達のいい部分を見ることができたからです。終わって見れば何てことはなかったこの騒動。市長さんにとっては実にいい騒ぎでありました。
「ピリカピリカ」
今日もまた歌声と一緒に屋台が出て来て子供達が飴を買っています。市長さんはその光景を夕焼けの中で見て言うのでした。
「この光景。これからも見ていたいな」
こう。夕暮れの中に暖かい目
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