意志
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そうやってため息をつくプリスキンさんだが、悲観しているようには見えなかった。自分の選んだ生き方を進んでいる以上、彼にとって恋愛とかは二の次なのかもしれない。
相談のお礼がてらに一曲だけ歌っていいかどうか彼に尋ねると、彼から聞いてみたいと言われたため、私がよく歌ってきた鎮魂歌を披露した。外の世界で初めてのコンサート……観客は一人だけだけど、私が前に進もうとする意思を示すための大事な……大事な始まり。暁から黄昏に変わるための、私の一歩。その意志を祝福するかのごとく、咲き誇る花の花弁が私の周りを舞い、空へ上っていった。そして……たった数分のコンサートが終わった時、隣から拍手が聞こえてきた。
「いい歌だ。久しぶりに良い声を聞かせてもらった」
「気に入ってくれたようで、何よりです」
「ああ……。それにしても……意志を誰かに伝えるというのは、案外簡単な事なのかもしれない……。俺達のやり方ではどうしても伝えられないものを、歌は伝えていける……。中々感慨深いな」
「……」
それから集合墓地を発ったプリスキンさんは煙草を一服しながら去っていき、私もウェアウルフ社への帰路に着いた。これからの未来……私が進むべき道。まだ明確には見つけられていないが、この出会いのおかげで少しは前に進もうと思えるようになった。私は正直に言うと弱い人間だから、時々立ち止まったり振り返ったりすると思う。でも……それでも一歩一歩前に進んでいこう。そうやって私が生きている姿を見せて……死んでいった皆に報いたい。
ずっと心配してくれてありがとう……皆……。もう大丈夫、私は……独りじゃない。だから……頑張れるよ……。
『お帰り、シャロン』
「ただいま、マキナ」
ウェアウルフ社で私達が住んでいる部屋に戻ってきて、マキナが笑顔で出迎えてくれる。彼女が私の顔を見た途端、以前と少し様子が変わっている事に気付いていた。
『あれ、何か良い事でもあった?』
「うん、おかげで私も前に進もうと決められたよ。……マキナに追い付くために、サバタさんのように強くなるために、私も頑張るよ」
『おおっとこの私に追い付くとは、シャロンも中々言うねぇ? じゃあ私も負けないって宣言しとくよ、シャロン!』
「い、いや……そこまで本気で勝負するつもりで言ったんじゃないんだけど……?」
『な〜に言ってんの。こういう時は勢いが肝心だよ! そうすれば自信を後押ししてくれるからさ!』
「そうなの? だったら私はともかく、マキナの目標は何なの?」
『私の目標は……やっぱりサバタ様かな。彼ほどの強さを、いつか私も身に付ける事。それが今の目標』
「じゃあ私の最終目標はサバタさんって事になるのかな? あの人色んな意味で凄いから
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