意志
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んじゃって……哀しくて苦しいだけのこの痛みが……何を支えてくれるというの? 皆の死が……私に何の力を与えるというの?」
「ふむ、故郷が全滅した事は気の毒だが……それを決めるのは君だ」
「……ふざけてるの?」
「ふざけてなんかないさ。死をどう受け止めるかは、結局の所本人次第だ。忘れ去るも良し、受け入れるも良し、心に残しておくも良し、死者の代わりに行動するも良し……。だが彼らの想いだけは忘れてはならない。例え憎い相手でもそれは変わらない、死を看取るというのはそういう事なんだ。そして君の場合、故郷の人達から受け継いだ想いは、恐らく君の事を案じている内容だろう。……何か、思い当たらないか?」
……思い当たる。村長さんや皆は常に、私に外の世界で居場所を作ってくれる事を願っていた。そしてマキナが帰って来てくれた時、二人で力を合わせて一緒に生きていくように思ってくれていた。
そう……私は最期まで皆に応援されていたんだ。前に歩き出す事を……外へ進んでいく事を。そして……幸せを。
「……その様子じゃ、思い当たったようだな。部外者の俺から言い表すとすれば、その想いは君自身が未来を見つけるための力になる、そんな感じだろう」
「そんな感じ……ですね。……ありがとうございます、戦場カメラマンさん。少し……前に進む勇気が湧いてきました」
「そうか。この後も辛い出来事が立て続けに襲ってきて、人生に絶望したりするかもしれない。とてつもない困難が続いて、未来が暗闇で見えなくなるかもしれない。だが……君はまだ若い。忘れるな……これからの世界を作り上げていくのは、君のような子の役目なんだ」
「はい……任せてください。ここで会ったのも何かの縁、“おじちゃん”の想いも私が後世へ伝えていきますよ」
「お、おじちゃん……。そうか……確かに……“おじちゃん”だな……」
あれ? なんか落ち込んでる? カメラマンさん、雰囲気は凄いのに、意外と面白い人なんだな。ちょっと印象が変わったかも。
「そういえばカメラマンさんの名前って、何と言うんですか?」
「名前は……プリスキン。イロコィ・プリスキン……元中尉。それで、君の名前は?」
「私はシャロンと言います」
「シャロン……いい名前だ。可憐な響きが、君に似合ってるな」
「あの……褒めてくれて嬉しい事は嬉しいんですけど……親子ほどの歳が離れている娘を口説くのは、いくら何でもマズいんじゃないんですか?」
「……言われてみればその通りかもな。ま、女性に対する俺なりの礼儀だと考えてくれ」
「くすっ……はい、わかりました。でもプリスキンさんがさっきのような言葉を言えば、女性からは引く手数多だと思いますよ」
「生憎だが仕事場の都合上、言う相手が見つからなくてな……」
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