意志
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、もう悪夢が再び起きないとわかって喜ぶ人もいれば、今更伝えられてもと困惑する人、亡くなった人は戻らないと悲観する人もいた。その中で私は……自分でも驚いた事に何も感情を抱かなかった。まるでしょうもない噂話を聞いたかのように、何の気持ちも湧かなかった。村長さん曰く、私の心はそこまで摩耗していたらしい。
だけど彼女が次に伝えてきた事には、私の心も反応を示した。別れてからずっと音沙汰が無く、行方がわからなかった友達……マキナの生存を教えてくれたのだ。そしてマキナがこれまでどこにいたのか、どんな扱いを受けていたのか、その全てを教えてもらった。アレクトロ社の被検体として投薬や実験を受け続け、人間として扱われていない日々。聞くだけで狂ってしまいそうな、最悪の日常。友達がこんな非人道的な事をされていたと知った私は、冷たく凍り付いていた私の感情を怒りと悲しみで満たした。
でもこうして伝えに来た時点で、彼女はもう助けられた後だった。それを行ったのは外の世界の、そのまた外から来た少年……。エレンさんと同じ、世紀末世界の人間。しかもその人は、マキナに酷い事をしていた人達に裁きを与えたどころか、悪夢の始まりである闇の書を無力化した張本人だった。それがサバタさん……私の代わりに復讐を成し遂げてくれた暗黒の戦士。
初めてだった……私が外の世界の人間に興味を抱いたのは。エレンさんは続けた……恐らく近い内に、彼はマキナと共にやって来ると。どうも彼の知人にヴェルザンディ遺跡の調査願いを出している者がいるから、その人を連れてくる流れで会えるかもしれないって。ひとまず彼らが来る可能性が高い調査の同行者に私が志願して、時を待つと……その通りになった。ただ予想外だったのは……銀髪の女性、リインフォースも一緒に来ていた事だった。
空港の屋上から彼女の姿を見た時、思わず私は後ずさりしてしまった。向こうからは見つかった事で陰に隠れただけに見えただろうが、本当は違う。私は……震えていた、恐怖で怯えていた。彼女の姿を見る度に、11年前の悪夢の記憶がよぎって寒気が走り、冬でもないのに歯がガチガチと音を立てていた。それでも彼女と話せたのは、11年前から身体があんまり成長していなかったマキナと、刺々しくも全てを受け入れてくれそうな雰囲気を纏う黒衣の少年……サバタさんの姿があったからだ。マキナとの再会を願っていたのは事実だし、彼が闇の書を無力化したのなら、リインフォースが暴走してもストッパーになってくれる。そうやって少しでも心を落ち着けられる要素を見つけて、どうにか彼女と接する事が出来た。彼女は彼女で事情があったのは知ってるし、贖罪しようと努力しているのも知っている。でも心に深々と刻み付けられた恐怖は、そう簡単には拭い去れなかった。
恐怖をこらえてアクーナまで案内して、私の家に泊めて、食事
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