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serial experiments S. A. C
イドの昇華 -Sablimatin of Id- Collective unconscious
lainとは
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割はほら、勉強とコミュニケーション能力を高めるためだから。だから口を酸っぱくして学校に来いーっ、なんて言われてたのよ」
「でも、今は……」
「そう。玲音の言う通りね。学校に行かなくても勉強できるし電脳空間でコミュニケーションもとれる。現実の肉体でのコミュニケーションがとりたいなら、オフ会にでもいけばいいしね」
「じゃあ、今子供だったら、柊子さんは学校に行かないのかな」
「そうねえ……私もあんまり学校が好きじゃなかったし、行かないかもね」
「学校なんて、大人が子供を管理したいだけの仕組みなのに」

ポットの中身が紅く色付き、茶葉を外に出す。
シュガースティックを2本受け皿に置いて、淡い色のティーカップの中に紅茶を入れる。
コーヒーメーカーから煎れたコーヒーをコーヒーカップに入れて、自分好みの味付けに。
砂糖少々とミルクをたっぷり。
「はい、お待たせ」
「ありがとう、柊子さん」
冷めないうちにまずは一口口に含む。
良く分からないなりにも香りが美しいのを感じることができた。
「人を好きでい続けるって、難しいのかな……」
「玲音、どうしたの?」
「私あんなに好きだったのに、お父さんのこと、もう憶えてないの。どんなふうに笑ってたかとか、どんなふうに話してたのか、とか。写真や音声データをみても、確信が持てない……。本当に私は、お父さんのことが好きだったの?どんなに好きでも忘れちゃうの?」
「……それはね、とても難しいことよ。私もまだ自分が好きな人のことを本当に好きかなんて、よくわからないし、世の中のほとんどの人が良く分からないまま過ごしている問題なの。」
「大人でも判ってないの?」
「そう。人の好みってどんどん変わっていくのよ……例えばえーと、好きな食べ物みたいに」
「そうかなあ」
「いつか玲音にもわかる時が来るわ。好きなものが変わってしまったり、嫌いなものが好きになったりする時が来るのよ」
にこりと玲音に笑いかけようとしたその時。
「うるさい!」
唐突な怒鳴り声が響いた。
見たこともない形相をして睨み付けている。
「うるさい!うるさい!うるさい!少しは黙ってろよ、あたしはお前なんて必要ないんだ!」
目の前に置かれている紅茶入りのティーカップを鷲掴んで目の前の空に投げ付けた。
ティーカップが床に落ちる音と荒い玲音の呼吸音だけが部屋に響く。

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