1部分:第一章
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さんが子供の頃にもいたぞ」
「お母さんが子供の頃にもね」
「そうなんだ」
お父さん達はこう子供達に言うのでした。驚いた顔で。
「もう二十年、いや三十年近く経つのに」
「まだいるの」
「俺もあのおじさんから買ったよ」
「私もよ」
大学生や高校生の子供達のお兄さんやお姉さんも言います。
「まだいたんだ」
「一体何時からいるんだろう」
皆そのおじさんから飴を買ったことがあるのです。皆がです。そのことに気付いて皆不思議な気持ちになります。この街で生まれてもう六十年になる市長さんも言うのでした。
「あのピエロのおじさんだよね」
「市長さんも知ってるんですか?」
「あの飴のおじさん」
「うん、勿論だよ」
こう子供達に答えるのです。
「だって子供の頃によく飴を買ったからね」
「そうだったんですか」
「市長さんも」
「おかしいなあ」
市長さんはここで腕を組んで首を捻るのでした。
「君達の話を聞いているとだよ」
「はい」
「どうしたんですか?」
「全然変わっていないんだよ」
首を捻ったままでの言葉です。
「全くね。どうしてかな」6
「全くっていうと」
「市長さんが僕達と同じ時にですか?」
「そうなんだよ。おかしいな」
「おかしいってまさか」
「あのおじさん」
子供達は市長さんの話を聞いて少しずつ怖い気持ちになってきました。ひょっとしてそれは、と思いだすと止まらなくなってきました。
「お化け!?」
「まさか」
「けれどあれよ」
皆顔を見合わせて口々に言います。
「ずっとだよ。市長さんが子供の頃からって」
「全然変わらないって」
そう言い合うのでした。
「おかしいよ、絶対」
「人間じゃないよ」
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