暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 4
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が子供自身にも有益であるのだと、その場で即時証明する為には?」

 固く閉じてた目蓋を開いて、恐る恐る顔を上げる。
 誰かが、廊下から歩いてきてる。
 ヴェールみたいな木漏れ日よりも明るい光を放つ人が、私の前に立って。
 そして、

「そう。ごほうびという結果を先に呈示してしまえば良い。子供が好む物を現物で与えるか、子供に都合が良い約束を条件として示すのかは、買い物の内容と照らし合わせて考慮すべき駆け引きだけど。ひとまず、子供の頭では面倒な行為と見返りがあるという結果で、釣り合いが取れる。親からすればそもそも子供の為でもある買い物なわけだから、ごほうび分は損失なのかも知れない。でもね。ごほうびを受け取った子供は高確率でこう答えるんだ」

 太陽が……降ってきた?

「「ありがとう!」って。無邪気な笑顔でね」

 真昼の陽光を溶かしたような金色の髪が(まぶ)しい。
 この男性は、誰?

「大切な家族の笑顔は、果たして損失と思われたごほうび分に不足するものだろうか? ……とかなんとか言ってもまあ、家族への想いのあり方なんて家庭それぞれの価値観があるし。他人が口出しすることじゃないけどね」

 あははっ、と軽快に笑う。
 (だいだい)色の目が柔らかく細められる。

 ……ああ。この人は、さっき私に微笑んでた、お客様の一人だ。

「少なくとも俺は、純粋な笑顔が何かに劣ることはないと思ってる。さて、君は周りの人達に笑ってて欲しい? それとも、泣いて苦しんで、(うめ)いてて欲しい?」
「……苦しんでるのは……嫌だわ」
「そう? なら」
「!?」

 な、なになに!?
 腕を引っ張らないで、()ける……っ

「笑って! 魔王退治って、いつ終わるのかも判らないお使いへ行く俺に、ごほうびをくれるとすっごく嬉しい!」
「え!?」

 ダンス?
 これ、上流階級の人間がよくやってるらしい、ダンスって動きよね?
 お屋敷でもたまに見かけるけど……
 あ、足がもつれる!
 それ以前に、今、なんて言っ

「君が笑うと誰かが笑う。君が涙すると誰かが悲しくなる。俺もね、誰かが悲しんだり苦しんでる姿は好きじゃない」
「きゃあっ」

 くるんっと回転させられて、腕の中に閉じ込められる。
 わ、私には翼があるのに、なんて器用なコトをするの、この人!

「君が同じように思える人なら」

 間近に、それこそ無邪気な笑顔が迫って。
 また、太陽が降ってきた。

「君も、俺達の仲間だね!」


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