解かれる結び目 4
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ても、見える景色に変化はない。
当然だ。
その音は、私の頭の中だけで響いたんだから。
「………う、そ」
何事かと私を見上げた人達が、不思議そうに首をひねる。
私は産まれてすぐ、神々の意思によって護られた。
神殿の敷地からは出られないように、神々の力を行使した制約を幾重にも課せられ、翼も翔べないように制限されていたらしい。
その理由は、私が生まれ持った力の性質にある。
『空間』を司る力。
純粋なる神々にも等しいこの力は、父さんとも母さんとも違う。
天神の一族に突然現れた、非常に稀で、特異な性質だった。
そのせいで、私の存在はこの世界に良い影響を与えないと判断されて。
でも、たった今、解放された。
これはどういう意味?
神々は何故、この瞬間に私を解き放したの?
理由もなくこんなことをされる筈がない。
深呼吸して、もう一度神々の声に耳を傾ける。
聴き逃してはいけない。
慎重に。真剣に。
神々よ、どうか、真意を……っ!
「……………………」
…………ダメ。
神々はもう、こちらを見ていない。
今日のお役目は終わりなんだわ。
「…………神々のご意思は、言葉を閉ざされました。また明日、来られるがよろしいでしょう」
焦りを胸に隠し、平静を装って、正面入り口から退席する。
その途中、お客様の一人が私を見て微笑んだ気がする。
昨日、遠くから私に気付いて微笑んだ人?
でも、今はそれどころじゃない。
早く神殿を出て一人になりたい。
何故? 神々は、どうして私を解放したの!?
私は何をしたら良いの!?
「マリア様」
「マリア様だ」
神殿の正面入り口と正門は、離れてはいるものの、直線上にある。
敷地の外、礼拝に来ていた村の人達が、入り口から出てきた私を見つけてありがたそうに拝むけど……。
私は、神々から言葉を預かる伝言役。
誰を助ける力もない、ここに居るだけの、ただの伝言役なのよ。
少なくとも、今日のお役目が終わるまではそうだったし。
これからもそうだろうと思ってた。
でも、今は違う。
体中に力が満ちていくのを感じる。
生まれてから一度として使えなかった、私の本当の力が。
神々は、この力で、私に何かをさせようとしてる。
「……っ、ぁ……あ……」
村人の尊敬と崇拝の目が怖い。
何も告げない神々の意思が怖い。
マリア様、と頼りすがる声で、背筋に氷が滑り落ちる。
「……ぃや…………、嫌だ……っ」
神殿から出られないことが恨めしかった。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ