第十一話 『敵の影』
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そこはまさに、ホラー映画で出てきそうな廃病院という風貌と化した場所だった。
「一日でこんなに変わるものか……」
寝ずにここまでたどり着いた俺たちは皆、疲れのいろをかくせない状態だった。
「安全を確認したら、ここで休もう」
いつものように振る舞う陵太だが、その顔に笑みはない。あいつも疲れてるんだ。
「何してるの?ここでモタモタしてたら、また奴等が集まってくるわ。早くいきましょ」
いたよ……疲れてない奴が。むしろなんか楽しんでませんかね優衣架さん……。怖えぇ〜……天然バカって怖えぇ〜……。
なんて脳内コントわしている場合ではない。一刻も早く休む場所を確保しなければ行けない。陵太の提案で、俺たちは一度、病院の管理室に身を潜めることにした。
「あんまり荒れてないな」
「鍵が掛かってたから奴等も入らなかったんだろ。使えそうなものがあるかもしれない」
そう言いながら、陵太はなにやらパソコンを調べ始めた。なので俺は、元気そうだった優衣架とともに、管理室内を調べることにした。ちなみに鍵は陵太がピッキングで綺麗に開けてくれました。入り口のところにあった懐中電灯の明かりを頼りに、暗い室内をゆっくりと進んでいく。
「母雲くん、これって無線機じゃない?」
そう言われて振り向くと、四機ほどの無線機がきっちりと並べられていた。
「そう、みたいだな。俺じゃ使い方分からないから陵太んとこに持ってこう」
そう言って無線機を持ち、みんなのいるところに戻ることにした。
「そう言えば、怪我は大丈夫なの?普通に歩いてるけど……」
ん、そう言えばそうだと思って傷口を見てみる。血は止まっているが、傷は全く塞がっていない。だが不思議と痛みはなかった。
「まあ、痛みはないから今は大丈夫だろ。感染症だけ怖いから、後で消毒するさ」
「そう……」
「何だよ、心配してくれんのか?」
「まあ、瀬田広一の時の借りがあるし、死なれちゃ困るかな」
「そうか……そうだな」
そう言って歩む足に意識を傾けた。皆の元に戻った俺たちは、陵太に無線機を渡し、部屋の鍵をすべて掛け、簡単なバリケードを作った。そのあと、管理室の机の上においてあった簡単な器具で傷口の消毒を行って治療を済ませると、ようやく安心して眠りにつくことができた。これまでの奮闘のせいか、眠気はすぐに襲ってきた。
次に目が覚めたときは、とうに朝の九時を回っていた。すでに起きていた陵太と無線機の調整を行っていると、他のみんなも起きてきた。
「全員起きたな。しばらくここで隠れていようと思うんだけど、病院の全貌も生存者の確認もしていないし、電気が無いからかなり不便だ」
これからの方針を固めた陵太が、全員に向けてそれを語っている。
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