序章
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その記念で航空祭をするんだぜ? もしよかったら行ってみるか?」
「ああ、行こう!」
俺は千冬を連れて近くにある航空祭へ足を運んだ。実は、その基地には親父が働いている。厳密に言うと、その基地に配属されている航空機のパイロットなんだ。そう、親父は航空機のパイロット。
「凄い人盛りだな?」
「そうだな? 離れないよう、しっかり手を握ってろよ?」
「う、うむ……」
俺はしっかりと千冬の手を握りしめ、彼女も俺の手を絶対はなさなかった。
しばらくして航空ショーが始まり、上空を舞うブルーインパルスや実戦の機体による演技飛行を観賞し存分に堪能した。
そして、ある航空ショーにて、俺は戦闘機に搭乗する親父を見つけた。
「あれ! あのパイロット、俺の親父だよ?」
「そういえば、お前の父親は空自のパイロットといっていたな?」
「ああ、俺の憧れさ……」
俺は親父が飛ぶところを見つめて、ふとこう呟いた。
「……俺もいつか、あんなふうに空を飛びたい」
「フフ、お前なら出来る……」
「無理だよ。何をやってもダメな俺じゃあ……」
「悲観的になるな? 努力さえすれば、夢は叶う」
「叶うと、いいな……」
「叶うさ? あ、なぁ! あれは何だ?」
ふと、千冬が音楽隊の演奏へ指を向けた。
「音楽隊だな? 自衛隊にはああやって演奏する部隊もあるって聞いた」
「見てきてもいいか?」
「ああ、行こう!」
*
一日中はしゃぎ回り、それは航空祭が終わるまで止まらなかった。気付いたころには夕暮れで、俺たちは夕日に照らされて基地の正門から出てきた。
「今日は楽しかったな?」
千冬がそう言ってくれた。彼女が楽しんでくれれば、俺も航空祭へ連れていった甲斐があり、うれしかった。
「そうだな。また、遊びに行こうぜ? 今度は遊園地とかどうだ?」
「ああ、いいぞ?」
自宅へ帰るまで俺たちのおしゃべりは止まらない。
俺は、今まで以上に千冬と親密な関係へと近づいた。ただの幼馴染から、徐々に……彼女っていうのに近づいてくるんだろうか? そう思うと、いつもの厳格でやかましい千冬が、とても可愛く見えた。
それから何度か俺は千冬と会っては共に出かけたり、一緒に学校へ行って頼まれた作業を手伝ったり、時折彼女の家に出向いて共に宿題をしながら、たまに彼女の弟と遊んでやったりもした。何をするにも彼女と過ごす時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。本当に楽しい日々を送り、内気で後ろ向きな俺の心は徐々に変わっていくような気がした。
……しかし、突如起こったあの「事件」で全てを失い、全てを引き裂かれてしまった。
夏休みが終わり、秋に変わった。徐々に寒くなる一方で俺と千冬の中には未だ春が続いていたのだった。
しかし、遊園地へ行く約束の日の前日に千冬は、親友の束と共に転向してしま
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