偽りある “衝動” の大火
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のエレメリアンを、グラトニーは敢えて見ようとはせず目を閉じた。
左腕と右足の吸気口は開いたままに、グラトニーは舌を向いて猫背になり、その場に立ち続ける。
“腕” のエレメリアンが通る度に風が猛り狂い、柿色の光源が幾つも尾を引き、徐々に加速していくその敵を、普通は目でなどとても負えない。
「っ!」
何も変わらぬ状況の中でグラトニーはいきなりカッ! と目を見開き、腕と脚から爆風を巻き起こした。
その勢いは凄まじく、吹き上げられた泥は光を遮り雲一つ無い快晴を塗りつぶして、その人為的な嵐は台風でも来たかと錯覚させる。
しかし形状の内風の根元、そこ以外は紫色では無い……即ち『属性力』の含まれない単なる風で有り、攻撃になどならない筈。
「〔ジョ!?〕」
そう―――攻撃 “には” 到底なりえない。
だが、右腕と胴体を使った不規則な動きを再現する為に、体までは『固定』出来ない事を利用し……“空中での”勢いを落とす事にはなりえるのだ。
幾ら左手が『固定』されていても、投げられてくる岩とは違い攻撃可能なのは “左腕” のみ。
結果、“腕” のエレメリアンの速度が落ち、その体を投げ出さざるを得ない。
「そこだっ!」
「〔ジョオオオオッ!?〕」
一瞬周囲無差別に吹かせた嵐を、今度は “腕” のエレメリアンへと一点集中して放ち、空中へ巻き上げて無防備な状態を晒させた。
チャンスは逃さない―――グラトニーは腕の吸気口を限界まで開き、足からのエアージェットにより戦闘機もかくやのスピードにて空中へと躍りでる。
そのまま繰り出すは左手では無い。まだ溜めるとばかりに右足を振り上げた。
「《風刃松濤》――――― “ニ連” !!」
発射口が定められていない特性を活かし、振り上げから振り降ろしにつなげて二つのカマイタチを射出した。
一発こそ “腕” のエレメリアンの右腕で防がれるが、同時に打ち上げられた事で二発目が胸をより深く抉った。
その傷からは見た目に表すかのように、異色なる血が吹き出て来る。
……されど、ここで“腕”のエレメリアンは奇妙な動きを見せた。
「〔ジョゴッハアアア……ジョオオオアアアア!!〕」
「……! 何を……」
逃げるつもりなのか空間に黒い穴をあけた “腕” のエレメリアンだが、この距離ではグラトニーの攻撃の方が早く、加えて穴のサイズも少し足りない。
ならば何をする気なのか? ―――――その答えは数秒と経たず “姿” を現した。
「鉄柱……!?」
『しまってやがったノカ……!』
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