2部分:第二章
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第二章
「本当に」
「そうだよ。男に二言はないさ」
「何とまあ」
ここまで聞いてです。あらためて驚いた顔になる父親狐でした。
そして母親狐もです。夫と同じく驚いた顔でいました。
その顔で、です。こう言うのでした。
「有り難うございます」
「御礼もいいさ」
源五郎は母親狐に対しても言うのでした。
「そんなものはさ」
「いいのですか」
「遠慮せず貰っておけよ」
また言うのでした。
「いいな、家族皆で食べな」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
二匹もそれに頷きます。そうしてです。
そのままです。源五郎からその油揚げを満面の笑みで受け取ります。子狐達も明るい笑顔で口々に言います。
「じゃあお父ちゃんお母ちゃん」
「すぐに食べよう」
「油揚げ食べよう」
その笑顔での言葉です。
「皆で食べようよ」
「あたしもうお腹ぺこぺこだよ」
「人間さん、どうも有り難う」
「美味いものはあれだよ」
源五郎はその子狐達に対しても言いました。今度は優しい笑顔になっています。
「皆で食べないとな。人だけが独占ってのもよくないさ」
「それでなのですが」
油揚げの包みを持っている父親狐がです。こうも言ってきました。
「今夜楽しみにしておいて下さい」
「今夜かい?」
「御礼はいいと仰いましたがそういう訳にはいきませんので」
嬉しい笑顔の中にも真面目なものがあります。
「ですから。今夜楽しみにしておいて下さい」
「どうやら断ってもだな」
「そちらも御好意を見せてくれましたし」
「今度はそっちってことかい」
「はい、狐にも仁義はありますので」
父親狐はそういうことはわきまえている狐の様です。人間でも中にはそうしたものを欠片も持っていない人がいたりするというのにです。
それに基づいてです。こう言うのでした。
「ですから」
「いいってのかい」
「はい、今夜お渡ししたいものがありますので」
「何度も断ったらかえって失礼だしな」
源五郎はここでこう考えたのでした。あまり断り続けるのもよくないと。こう考えたのです。
そしてです。彼の答えは。
「わかったさ。今夜だな」
「はい、今夜です」
「受け取らせてもらうな」
今度は気さくな笑顔での言葉でした。
「今夜な」
「楽しみに待っていて下さい」
「それじゃあ」
こんな話をして狐達に油揚げを渡した源五郎でした。彼はそれから道を引き返してまた油揚げを買いました。そして家に帰ってそのうえで女房のお通に話すのでした。
おっとりとした顔の気のよさそうな人です。その人が言うのでした。
「それはいいことしたね、御前さん」
「そう思うかい」
「その狐達が喜んでいたんだよね」
「ああそうさ」
源五郎はにこりと笑って
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