第三話:違和感の二乗
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が、たった一回のだんまりがそこまで思考を都合よく改竄させた、切っ掛けになった訳じゃあるまいな……?
そんな事は無いと自分に言い聞かせ、机の上に置いてあったノートを見やれば、次に思い出すのは火にくべたノートの事である。
「……中身、なんて書いていたっけか……」
確か能力だけ書いてあり、楓子がよくやるような―――どこの一言一句を切り取っても、自分の考えを少しも伝えられてすらいない、そんな物語モドキな文字の羅列では無かった。
一度気にするとどうにも思い出したくなり必死に記憶をたどる。
……結果は、無駄に終わったが。
「はぁ……まあ良いか、大したことでもない」
誰にともなく呟いてから机の上の時計へと、視線の向かう先を変える。
今日の予定は何も無く、かと言って理子とは出会いたくなく、境内での俺の仕事は掃除と絵馬の焼納ぐらい。
行うべき仕事も、やるべき用事も、ことごとく存在していなかった。
「だからと言ってコスプレはなぁ……」
前世の冷たい生活とは、比べ物にならないぐらい刺激があり、そして温かい今の生活。されど、何処か所ではない苦しさも感じる生活。
そこにやっと慣れ始めてきた自分はどれだけ捻くれているのかと、苦笑して窓の外を見やる。
丁度タイミングよく、小鳥が横切っていった光景が目に入り、俺はほのぼのした心境で目を細めるのだった。
もうこの時から、ほのぼのなどしていられない状況に、既に陥っていたと言うのに。
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