第三話:違和感の二乗
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っ! ……いや、何でもない」
「そうか? 本当に何事もなかったのか?」
「ああ、何時も通りだ親父」
此方を疑ってこそいれども、しかし俺や楓子は、何時もとは言わないが見張られ、且つ品行方正な行動を取れと強制されている身。
そして父親からしてみても思い当たる事柄など無いのか、お茶を啜り新聞を読む方へと戻った。
もっと何かしらグダグダ責められるかと思えば……勿論卑しい隠し事は無いし、非行に走っている訳でもなければ、読むと馬鹿になるなど迷信にも近い理由で禁止している漫画も買っていない。
まさかとは思うがこの親父は、ギャグ漫画しか世の中には存在しないと、本気で思っているんじゃあるまいな?
生まれた時から意識がはっきりしており、赤子の時から彼等を見てきていても、未だにこの人らの考えが分かり辛くて仕方ねえ……。
実に不可解な出来事ばかり起きる所為で、朝から鎧でもかの如く体が重い。飯を食い出来るだけでも、如何にかエネルギーを補給したい所だ。
でなければ全身に掛かる精神的ながら、それでも物理的にも近い重圧の所為で、遊ぶ事は愚か机にかじりつき勉学に励むのも無理になる。
「は〜いお待たせっ! 京平さん、麟斗。朝ご飯出来たわよ」
「うむ、今日も旨そうだな……麟斗、調理してくれた優子さんに、そして命をくれた生き物たちに感謝し、有りがたく頂こう」
「……うっす」
「「頂きます」」
力なく手を合わせてから、空元気も絞り出せず気迫も何も含まれない、何処か抜けた声でお決まりの文句を口にする。
幾度となく強制されて正確に “させられた” 箸使いで、焼き鮭の身をほぐしてご飯の上に載せ、そのまま口に運ぶ。
ほど良く硬く噛み締める度に甘くなる白米と、薄くは無くかと言って辛過ぎもしない、絶妙の塩加減と外カリカリ中ふっくらな鮭が、落ちた食欲を少しでも取り戻してくれる。
エネルギー補給は、これで何とかなるだろう。
―――そう言った展開になると、口に入れるまでは思っていた。
「……ん?」
「あら? どうかしたの麟斗?」
「いや……」
もういい加減にしてくれと心の中で叫びながらも、偶々『そういう場所』を選んで口に入れたのだと言い聞かせ、次は大きめの塊と共にご飯を口に運ぶ。
「あぐ……っ?」
途端に舌へと襲い来る、デンプンが作る甘みと鮭独特の風味―――――では無く、『少しだけ感じる』それらを大無しにする程、余りに単調な『辛み』と『苦み』と『甘み』、そして微かに上る不快な匂いならぬ『臭い』。
みそ汁を飲んでみれば、鮭と驚くほど似通って……否、同じとしか思えない『辛み』と、粘土の高い液状の内服薬を飲んだ様な『不
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