暁 〜小説投稿サイト〜
少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
第二話:月日は流れる。
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
挙動の停止をどう汲み取ったか、楓子は早口に『エレメント]V』の魅力とやらを語り始めた。
 しかしこの娘、空想を妄想の域まで昇華できる無駄な才能の持つ代わりに、それを他者へと伝える能力は全くない。
 ……詰まるところ、何を言っているのかが分からない。


 向こうからすれば評論家張りの弁舌を述べているのだろうが、此方からすれば不可解な単語を羅列されているだけだ。



 この文句は二度目になるが、文句(ソレ)が自然に浮かぶぐらい普通にウザったい。


「とにかく一度読んでみて! これも置いてくね! じゃっ!」
「あ…………おい」


 一頻り語ると嵐の如く去っていき、しかし『エレメント]V』の既刊五つと、コスプレセットらしきモノは置いて行ってしまった。
 ちなみに鬘は無いがワックスはあった。恐らくその “黒崎水城” とかいうやつは、俺と髪の色が同じなのだろう。……ラノベキャラと同じとは、泣いたらいいのか喜んだらいいのか……。


「……まあいいか、暇潰しだ」


 これ以上ストレスを増やさない為に身の丈に合った、比較的入試が楽な学校を受験する予定なのだし、受験勉強ばかり続けて煮詰まっても仕方ないと、取りあえず一巻から読む事にした。


「……へぇ、これは中々……」


 意外とはまった。読んでいる内に、心に張り付いてきた負の思考は、段々と晴れて行った。
 この本が思わぬ第二の癒しをくれた事は、少しばかり彼女に感謝できる事柄である。


 まぁ……だからと言って、コスプレはしたくないが。




 結局置いて行った五巻全部―――今のところ七巻まで出ているので、二巻分読んでいない―――読み終える頃には、既に深夜一時を回っていた。



「……寝るか」


 そばに置かれたコスプレセットを見ながら、明日の朝も早いのだとベッドへ横になる。

 特に夢を見ない方である俺だが、その日は珍しく超能力を使う夢を見たと言っておこう。




 敵に向かって炎の球体を投げ付けた所で目ざましが鳴り、俺は日の光を顔に受けながら目を覚ます。

 まぶしい、うるさい、まだ寝ていたいの不快感三コンボを払いのけ、さっさと私服へ着替えて境内へ向かい、箒で払い清める。


 ……と、ふと見てみると、何時の間にやら絵馬が奉納されている絵馬掛が一杯になり、次の絵馬が掛けられない事に気がついた。

 これも一応役割なのだし、今燃やしてしまうか……。


「いや、ちょっと待てよ……」


 焼却場へ向かおうと踏みだした先、俺はある事思い出してそこで踵を返し、家へと走って戻ってから『半黒歴史』ノートを持って戻ってくる。

 元々鬱憤晴らしのために書いたものだ。用などとっく
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ