第二話:月日は流れる。
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もウザったくてたまらないのに、コレが家族で有ればどれだけ嫌なのか、程度の大小あれ一部除けば誰にだって分かるというのに。
尤も俺の場合、生まれたころから見知っているという理由が為か、家族と言うより出産時に立ちあった年下という印象が強いのだが……。
だったら女性として意識できるかと言えば、特殊な性癖を持たない限り赤子の頃から見てきた者に、恋愛感情を抱いてみてくださいと無茶ぶりされている様なモノ。
肉体的な実年齢からすれば二歳違いだが、意識的な違いの所為で恋愛など無理なのである。
しかしながら、馬鹿が故に他の家族より近寄りやすいのも否定できない事実であり、これでもう少し良識があればと俺的に悔やまれる。
そんな残念娘こと楓子は、何か裏のありそうな笑み(俺からしてみれば)を浮かべ、態とらしく涙を目じりに溜め(多くも少なくもない微妙な量)て、両手を顎の下に当てて身を縮めながら近寄ってきた。
嫌な予感しかしない。
「あのねお兄ちゃん? お願いがあるの」
「……で?」
「このラノベ―――『エレメント]V』のぉ、裏主人公の黒崎水城のコスプレ……して? ねぇ、お願い?」
「失せろ」
やはり碌な事じゃあ無かった。
言葉で切り捨てさっさと勉強に戻るべく、机の方を向いてシャープペンシルを持ち上げるが、楓子はしつこく食らいついてくる。
ウザイ。
「お願い! 読めばわかるから! ハマるから! コスプレしたくなるから! ほら此処の『この魂に刻まれた “孤独” の業が、俺をまた強くさせる……』とか言いたくなるから!」
「……」
聞き流そうとしていたのに、その台詞を聞いて俺は動きをピタリと止めた。
勘違いしないよう言っておけば、別段その台詞が格好いいなどと思った訳ではない。ひどく癇に障るが、台詞の一部分が今の俺の状況を説明している様だったからだ。
思えば前世だって、友達が居た訳では無かった。学園祭の割にクラスメイトで打ち上げに行く際、暇だからと俺も参加したりはするものの、終ぞ三年間声を掛けられなかったのだ。
明らかに気弱な者達でもそこでコミュニティを形成しており、要するに何のグループにも入っていなかったのは、俺一人だけだった訳である。
そして此方に転生してから友達が出来たと思えば、俺自身の価値観や家族に知り合いの行いもあり、家族とも親しい者達とも中々距離を縮められない毎日。
いっそ魂にまで『孤独』の二文字が刻まれているのではなかと、世迷い事ながらその言葉を浮かべて立場を錯覚する。
心ばかり振り切れてはいけない方向に強くなっていく。
何か得したか? いや、得していない。
この俺の沈黙と
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