第159話 黄承彦がやってくる 前編
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意見した。彼女がここまでしつこく言うのは理由がある。
黄承彦は正宗が檄文を発した一週間後に食邑二千戸の税収に匹敵する兵糧を献上してきたからだ。豪商とはいえ並みの豪族では献上するには経済的にきつい量だ。ここまでした人物を足蹴にするように追い返せば正宗の悪評が広まる。礼に対して礼を踏みにじる。最悪の行為である。孫文台の罪を不問にするのとは全然意味合いが違う。朱里がしつこく食い下がる理由も頷けた。
「黄承彦が兵糧を献上した理由は朝廷への忠誠心からか。それとも私への縁を繋ぐためか。はたまた蔡一族である夫の助命を願い出てきたか」
「いずれも当てはまりましょうな。後は紫苑殿の件でしょうか。正宗様、礼を尽くした相手に会わないのは他の荊州豪族からの信頼を失います。わざわざ向こうから出向いてきている以上、気乗りしなくても会うより仕方ありません」
伊斗香は神妙な表情で正宗に答えた。朱里と彼女から意見され正宗は誰にもわからないように小さい溜息をついた。
「朱里は黄承彦が私に会いにきた理由は何だと思う」
「正宗様と伊斗香殿の考えと同じです。大量の兵糧を献上してきたあたりから何かあるとは思っておりました」
正宗は腕組をし考えこんだ。
「黄承彦の夫は蔡徳珪の実兄であったな。それに劉景升の夫の兄でもある。厄介この上ないな」
正宗は眉間にしわを寄せ考え込む。
「朝敵である蔡徳珪の実兄の助命については即断は禁物です。蔡徳珪を討伐後に時間をかけて処理すべきことと存じます。それに黄承彦殿の貢献を考えれば不用意に荊州豪族の疑心を買うような真似は得策とは思いません」
伊斗香は考える仕草をしながら正宗に意見した。
「黄承彦殿の夫とはいえ、蔡徳珪の実兄を見逃すのは無理だと思います。しかし、黄承彦殿は兵は出していませんが兵糧を供出することで恭順の意を示しています。ここは助命については名言せず、伊斗香殿の仰る通り時間をかけて処理されるべきと思います」
朱里も伊斗香に同意しているのか難しい表情を浮かべていた。聡明な黄承彦の行動に二人とも困っているようだった。
「この場で議論を交わしても時間の無駄ではないでないでしょうか? 一度、黄承彦殿にお会いし仔細を聞いてからでも遅くはないかと存じます」
桂花が三人に対して意見を述べた。視線が彼女に集まる。
「黄承彦がただ私に会いにくるとは思わないのだがな。厄介事の臭いしかない」
正宗は黄承彦に会うことは納得している様子だが、対応策がまとまるまで黄承彦に会いたくない様子だった。
「黄承彦殿は果断な性格の御仁であり商人でもあります。正宗様に一方的な無理難題を押し付けるような愚かな考えはしないでしょう。わざわざ出向いてきたということは何か理由があってのこと、助命の話で
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