第159話 黄承彦がやってくる 前編
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る?」
「一度、蔡平は蔡仲節を殺そうと襲ったからです」
「話の流れからして蔡仲節は生きているのであろうな」
正宗は不愉快そうだった。
「しかし、蔡平がそんな真似をして、面倒を見ていた老夫婦もただでは済まなかったのではないか?」
正宗は蔡平の面倒を見ていた老夫婦のことが気になったのか伊斗香に質問した。
「蔡仲節は逆上して蔡平に暴力を振いました。老夫婦が庇ったおかげで蔡平は半殺しで済みましたが老夫婦は蔡仲節の暴力で受けた傷が元で死にました」
正宗は伊斗香の話に沈黙した。
「蔡仲節は県令に捕らえられ罪人となったのか。ろくでなしには相応しい末路だな」
正宗が憮然とした。伊斗香の言葉を否定するように顔を左右に振った。
「いいえ。蔡仲節は無罪放免です」
「そんな男を県令は放置したのか!?」
「蔡仲節の兄・蔡伯節が表沙汰になることを恐れて県令を買収いたしました。そのため老夫婦が蔡仲節に殺されたことは無かったことになっております」
正宗は呆れていた。その表情からは汚職官吏が蔓延っていることに正宗は心底失望している様子だった。
「蔡平はどうしているのだ」
正宗は徐に蔡平のことをたずねた。
「死んだ老夫婦の家で一人住んでいます。その事件以来、村の者達は蔡平を腫れ物を扱うようになり近づきません。村長である蔡伯節すら関わろうとしません」
「蔡平という娘は不憫と思うが到底私の任務に応えることができるとは思えない。村で除け者になっている者に間者の役目は無理だろう」
「まあ、最後まで話をお聞きください。老夫婦が死んでから、どういう訳か蔡平は畑を耕し竹細工を作っては襄陽城に売りにいっております。父親を殺そうとした者が急に大人しくなりました」
「老夫婦の死で全てを諦め考えを改めたという可能性はないのか?」
「そうは思えません。暇を見つけては一人で剣の修行をしております。所詮、我流の剣技なのでどこまで役に立つかわかりませんが」
伊斗香は正宗の意見を否定した。
「父親を殺すために剣技を磨いているということか?」
「そうではないかと思います」
「何故、お前が蔡平のことをそこまでわかるのだ?」
正宗は伊斗香の確信めいた発言に疑問を抱いた。
「盗賊討伐でたまたま蔡平が住む村に立ち寄ったのです。その時に彼女と会いました。彼女は私に剣を教えてくれと必死に頼み込んできたので、数日程村に滞在して剣の手ほどきをしたことがあります。筋は良いと思いました。その時、彼女の身の上を住民から聞きました。私が滞在している時、蔡仲節は私の前に姿を現さず、自室に籠もっているようでした」
正宗は考えこんだ。
「伊斗香、蔡平と剣を交えたなら感じたものがあろう。どういう感じであった」
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