第159話 黄承彦がやってくる 前編
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ば何とかなるやもしれません」
伊斗香は狡猾な笑みを浮かべ正宗に答えた。
「如何にして離反者を作る?」
「簡単にございます。いかに忠誠心が篤かろうが、主人に疑いをかけられ家族にまで類が及ぶとなれば簡単に裏切りましょう。それに次の目標の村には私に心当たりある人物が一人おります。その人物は蔡一族へ強い恨みを抱いております」
伊斗香は小声で正宗に説明した。
「そのような都合の良い人物がいるのか?」
正宗は伊斗香を訝しんだ。
「その人物は蔡一族の情報には疎いですが、この非常時にあっても襄陽城への出入りは自由にできる人物です」
正宗が難色を示すと伊斗香は自らの発言に情報を補足した。
「襄陽城へ自由に出入りできる人物か。その人物は信用に足る人物なのか?」
「信用できます。蔡一族が滅ぶことを願っていますから」
伊斗香の言葉から正宗は伊斗香が薦める人物が蔡一族に強い遺恨があることを察したようだ。蔡一族に面従腹背で従属している人物であれば、最悪でも蔡一族に利する行動をとらない。
「進めてくれるか?」
正宗は少し考える仕草をし伊斗香に人物を調略するように指示を出した。
「畏まりました。正宗様、その人物は蔡一族の血筋の者ですが構いませんでしょうか?」
伊斗香は正宗の言質を取ると問題ある情報を告げた。正宗は渋い表情で伊斗香を見た。
「心当たりというのは蔡一族の者なのか? それとも外戚か?」
「血筋のみは紛れもなく蔡一族でございます」
伊斗香は正宗に微妙な言い回しをした。
「それは本当なのか? 蔡一族に恨みを抱いているなら何故私の檄文に応えなかった。そのような者は一人も私の元を訪ねてきていないぞ」
「正宗様に謁見できようはずがありません。その者は蔡一族の後ろ盾も地盤も何も持っていないのです」
伊斗香は正宗に言った。正宗は一瞬で神妙な表情に変わった。
「訳ありの人物なのか?」
伊斗香は正宗の言葉に肯定するように頷いた。
「その者は蔡一族であることは間違いありません。ただ、母が娼婦の出身で妾の立場であったため蔡家の者として扱われておりません。その者の母は二年程前から病を患っておりましたが、その者の父は禄に面倒も見ず病が悪化し一年前に他界しました。その者の蔡一族への憎しみは計り知れません。その者の父を殺す機会を与えてやると言えば間違いなく協力します」
伊斗香は馬を寄せると囁くように正宗に説明した。彼女の申し出に正宗の表情は曇った。
「正宗様、内通させる以上、蔡徳珪討伐後はその者の助命は確約願えますでしょうか? もし、ご同情なさるなら、その者が功を上げた暁には仕官していただきたく存じます」
伊斗香の口ぶりから彼女が気にかけてい
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