第159話 黄承彦がやってくる 前編
[3/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ある。
「朱里、次に攻める村へは使者を送ったか?」
正宗は彼の少し後ろで騎乗する朱里に声をかけた。
「滞りなく。村長が賢明で徳高き人物であれば自らの首を差し出し、住民の助命を願い出ることでございましょう」
朱里は口では村長が投降する可能性を示唆したが、彼女の声音は村長は投降しないと考えているように感じられた。荊州で権勢を欲しいままにしている蔡一族に村人達のことなど虫けら程度にしか考えていないだろう。彼女の後方か騎乗して着いて来ている桂花の表情も彼女と同じだった。
蔡孝伝の愚劣振りから朱里と桂花の蔡一族への評価は最悪だった。
「そのような人物であれば既に私の檄文に対して恭順の意を示していているはずだ。この段階での投降は村人達に被害が及ぶ確立は五分五分。危険な賭けにでる者が村人達の命を考えるわけがない」
正宗は村がある方角を凝視していた。
「劉景升様は固有の軍事力をお持ちでなかったために、蔡一族へ飴が必要でございました。それが蔡一族の増長を招いてしまいました。しかし、正宗様は蔡一族を潰せるだけの軍事力をお持ちです。増長した蔡一族は毒にしかなりません。これを機に完全に叩き潰すのが上策と存じます」
伊斗香は神妙な表情で正宗に蔡一族の族滅を再度意見した。彼女の中では蔡一族は完膚なきまでに粛清する必要があると考えているのだろう。それと三日前の蔡一族の処刑で非戦闘員である子供を殺したことを正宗が引きずっていると思っているのかもしれない。それで今後のことを考え、彼女はわざわざ彼に忠告しているともとれた。
「分かっている。伊斗香、村人達は村を捨て逃げると思うか?」
「次の目標の村は蔡一族が村長を務める村です。村人は大半が蔡一族の者に従属する小作人(土地を持たず大土地所有者に隷属する者のこと)です。元々は流民ばかり、前回は住民にとっても突然のことで動揺し逃げ遅れた感もあります。今度は殲滅された村の情報も既に得ているはず。正宗様が目標と定めたことも使者により知りえることでしょう。であれば、流民出身の彼らは間違いなく逃げると思います」
伊斗香は思い出すような仕草をしながら正宗に説明した。
「村に残る者達は少なからず蔡一族に縁がある者達ということか?」
正宗がそう言うと伊斗香は頷いた。
「絶対とまでは言い切れませんが蔡一族に長年仕える者達が殆どと思います。生かしておいては面倒な者達であることは確かです」
伊斗香は小声で正宗に呟いた。
「蔡一族に長年仕える者達から離反者を出すことはできないか? 襄陽城攻めを前に城内の情報を詳しく知る者が欲しい。できえれば間者として城内に潜伏できる者であればなおいい」
「これから向かう村から離反者を出すことは時間的に無理でしょうが、次の村であれ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ