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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第159話 黄承彦がやってくる 前編
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 蔡孝伝とその家族の処刑が行われた後、正宗は殺戮を命じた村のあった場所に足を運んでいた。
 村は面影を失い廃墟と化していた。村を囲む塀は炎で焼け無惨に倒壊し塀の先がまる見えの状態だ。
 正宗が村の中に足を踏み入れると、そこには焼け崩れた家屋の残骸が辺りに広がりっていた。その残骸の近くに住民達の遺体が転がっている。遺体の多くが村の入り口付近に集中していた。その光景を見るに住民達が必死の抵抗を試みたことは容易に想像がついた。
 正宗は物を言わなくなった遺体達を凝視し、拳から血の気を失うほど強く握りしめていた。彼も仕方なかったとはいえやるせない気持ちなのだろう。それを余所に兵達はせわしなく遺体を布に包み村の外に運び出していた。彼らは正宗の存在に気づくと作業を中断し拱手し深々と頭を下げるが、直ぐに遺体を運ぶ作業を再開していた。
 その光景を正宗は感情がない交ぜになった複雑な表情で眺めていた。しばらくすると彼は村の中央部に進んで行く。彼はそこで歩くのを止めた。
 粗末な家屋の残骸の影に隠れて子供の遺体が複数倒れていたのだ。その遺体に正宗はゆっくりと近づき周囲を見回した。そこにはまだ多くの子供の遺体があった。遺体の年の頃は正宗が処刑した蔡子真と同じか数歳ほどしか違わない背格好だった。村の住民が幼い子供を庇うために村の奥に避難させたのだろう。彼らの遺体には全て剣による深い刀傷が見られた。
 正宗は脱力したように膝を折り地面に座った。そして、彼は視線を地面に落とすと乾いた笑い声を上げた。その声音は力なく小さかった。

「仕方なかった。いいや。いくら弁解しようと私は鬼畜の所業を行ったのだ」

 正宗は力無く小さい声で呟いた。彼も命令を出した時にこうなる事態は理解していただろう。しかし、頭で理解できても目の前で見せられれば彼も人の子である。感情があるが故に心が動揺するのも当然のことだろう。
 彼は打ちひしがれたのか体勢を前に崩し、頭を下げ地面に両手をつけた。

「私は何をしているのだろうな」

 正宗は自嘲した。彼の指に力が込められ地面に食い込んだ。

「私の命令に従った兵士達は私以上に苦しんだであろうな」

 正宗はつぶやき、ゆっくりと顔を上げた。彼は哀しみに満ちた表情で子供達の遺体をゆっくりと見回した。

 それ後も正宗は一刻(十五分)程その場にいた。

「正宗様、ここに居られたのですね」
「泉か。ご苦労だった。支障は無かったか?」

 正宗に声をかけた者がいた。正宗は声の主に振り向くことなく返事した。

「何も問題はございませんでした」

 泉は一拍間を置いて元気無く正宗に答えた。彼女も子供達の遺体に視線を向けているだろう。

「泉、私は蔡徳珪を討ち荊州を掌握するまでこの光景を幾多と作っていくことになるだろう
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