暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 3
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が違う。
 まず、足元には雑草が無いでしょ。
 花壇以外は地面が剥き出しになっているから、それなりに歩きやすいの。
 木と木の間隔や枝の伸び具合も、柵の外からは直接神殿が見えないように計算と工夫を施してあるみたい。
 正門と神殿の正面入り口をまっすぐ繋ぐ石畳の周辺に限っては、荷馬車も通るからって理由で見晴らしを良くしてるみたいだけど。
 それでも林に一歩踏み入れば、途端に視界が悪くなる仕組みになってる。
 だから、私が林に潜んで盗み聴きしてるのも、外の人達にはバレてない。
 今日は大きな声を出しちゃったから、少しは聴こえたかも知れないけど。

 もちろん、視線を上げれば背が高い神殿の尖った屋根は見えるわ。
 だって、木々の何十倍も大きいのよ、神殿は。
 雷が落ちたら怖いわね。



 ほとんど遊歩道に近い、風の通りが心地好い林沿いを。
 自室があるお屋敷へ向かって、ゆっくりと歩いていく。

 あ。あれがお客様かしら?
 廊下を挟んで小さく見える中庭の噴水周辺に、大神官様と、エルンストを含む護衛騎士の四人、見慣れない格好の男性三人が揃って、談笑してる。
 その中の一人が……

 え? 私に気付いた?
 遠近感を利用したら、人差し指と親指の爪の先で、頭から足先までを軽く摘まめそうな、この距離で?

 表情は見えないけど……なんだろう。
 微笑まれた気がする。



「もう居ない」

 二階の自室に戻って、押し開いた窓から中庭を覗いてみた。
 そこから見えるのは空と緑の間を行き交うたくさんの鳥と、畑の手入れに勤しむいくつかの人影と、のんびり流れる穏やかな空気。
 さっき見かけた集団はどこにも居ない。

 きっと、忙しい人達なのね。
 神殿に来たってことは、神託が目的だと思うけど。
 今日はもうお役目を終わらせてるから、多分、客室に案内されたんだわ。
 下手にうろつかれると、私の行動範囲が(せば)められちゃうし。
 じっとしててくれるなら、すっごい助かる。
 祭壇の前以外で鉢合わせるのも、立場上問題があるし、ね。

 ああでも、お客様が居る間は結局、祭壇と自室の往復になるのか。
 窮屈(きゅうくつ)だなあ……

 あ、裏門側なら大丈夫かも?

 客室は神殿の片隅に設置されてる。
 お屋敷の住人は、お世話係の女性が十人ほどと、護衛騎士が十人だけ。
 裏門は非常用の脱出口だから滅多に利用されないし。
 実際に、もう何十年も開閉されてない。
 正門側と違って放置気味で、騎士達もあまり寄りつかない場所だ。

 うん。お客様なんて絶対に来ないわ。
 良い隠れ場になりそう。
 まだ自室に籠るには早いし、今から様子を見に行こう。

 ベッド横の鏡台に小箱を置い
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