第40話 暗闇の中を漂う君へ
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う一度俺の方を向いた。
「行こうか、ジェーン」
そう言われて、ようやく俺は足を進めた。
**********
「ジェーンちゃん、手は洗ってきた?」
奥さんはドアを開けて入ってきた俺に訊いた。
「うん、石鹸使って洗ってきた!」
俺は元気に答えた。外から帰ってきたら手を洗うように
父さんからいつも言われていたのが役に立った。
ちなみに、この町は"鎧虫"による被害はあまり多くなく
水道もポンプ室が破壊されていない為か使用することが出来る。
蛇口をひねれば水が出てくる。そんな常識が今の時代にはとても貴重なことなのである。
「そう、バイ菌だらけの手でご飯食べちゃったらお腹壊すかもしれないからね。
お父さんからは手を洗うように言われてるの?」
「お父さんもおばさんと同じことよく言ってるから」
おばさんと呼ばれるのをあまり快く思っていないらしく
奥さんはその瞬間、眉をピクリと動かして反応した。
しかし、歳の随分離れた俺にとっては"小母さん"と呼ぶのが普通なのだ。
「一応、若いってよく言われる方なんだけどなぁ‥‥‥‥」
"オバサン"と呼ばれていると思っている奥さんは
ため息をつきながらつぶやいた。"小母さん"と呼んでいる俺には
いったい何が悪かったのかが理解できなかった。
「そう悩むなよ。シワが増えるぞ?」
「あなた!!もう!!」
奥さんは怒ってそっぽを向いた。父さんに何が悪いのかと訊いたが
『ジェーンは間違ったことは言ってないよ』と言い包められてしまった。
「それは私が老けてるって言いたいんですか!?」
「い、いや、別にそう言う意味ではなくてですね‥‥‥‥‥」
奥さんの怒りの矛先は父さんに向いてしまった。
彼女の強気の一言に父さんは若干後退気味の様子だ。
そんな感じで賑やかになっていた場の空気が次の瞬間に一変する。
ピシャアアアアッッ!!!
閃光と共に空気を切り裂く轟音が鳴り響いた。
「きゃッ!!!」
俺は驚きのあまり声を上げた。随分近くに落ちたのだろうか。
今まで聞いた雷鳴の中で一番と言えるほどの威力だった。
「‥‥‥‥嵐ももっとひどくなるのかしら‥‥‥‥」
「‥‥‥‥さぁ‥‥‥どうだろうなぁ‥‥‥‥‥」
この家の夫婦も心配そうにしていた。
彼らにとってもこの雷の威力は初体験なのだろうか。
もしも、この家にそれが直撃したら一体どうなるのだろうか。
俺の不幸がそれを実現しそうで怖かった。そのせいで震えが止まらなかった。
「‥‥‥‥‥‥‥大丈夫」
震える俺の手を父さんは優しく包みながら言った。
すると、震えは少しずつ治まっていった。
「もし何かあっても、お父さ
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