第40話 暗闇の中を漂う君へ
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の全身を
父さんの温かさがゆっくりと包み込んだ。
「‥‥‥‥‥良かった‥‥‥」
父さんは俺を抱きしめたままつぶやいた。
そして、立ち上がって男に礼を言った。
「すいません。ありがとうございました」
「いえ、私は何もしていませんし。では私はこれで」
男はそう言いながら急いで自分の家の方へと走って行った。
いざ入るとなるとどうするべきかを困っていた俺を見て
近いとはいえ酷い嵐の中に出て来て、ドアを叩いてくれたのだ。
俺はお礼は言えなかったが、心の中で感謝した。
「とりあえず、家の中に入りましょう」
奥さんは風に負けないように少し声を張って全員に促した。
全員は風で強く押さえられたドアを開いて家の中に入って行った。
ギィィ‥‥‥‥バタン!
ドアを閉め終えて振り返った父さんは少し険しい表情をしていた。
その理由を、俺はこの時十分に理解していた。
父さんはしゃがみこんで俺の両肩を少し強く掴んだ。
「‥‥‥‥‥どうして」
父さんはそう言いながら下げていた顔を上げた。
「どうして家で待ってなかったんだっ‥‥‥!」
肩を掴む力がさらに強くなる。少し痛かったが
父さんが感じていた心の痛みに比べれば大したことはなかった。
「‥‥‥‥だって」
俺は俯いたままつぶやいた。
「お父さんがすぐに帰ってこなかったから‥‥‥‥」
両手をギュッと強く握りしめた。
「おじさんの家は近いからすぐ帰ってこれるって言ってたのに‥‥‥」
身体を小刻みに震わせている。
「帰って‥‥‥来ないから‥‥‥‥心配で‥‥‥‥‥‥」
両目から涙が溢れ出て、それは頬を伝って床に落ちた。
俺は両手を顔に持って行って涙を拭おうとしたが
とめどなく溢れて来る涙は拭い切れずにまた頬を伝って行った。
「う‥‥‥うぅ‥‥‥‥グスッ‥‥‥‥」
身体の奥から湧き上がってくる何かを抑えようとしたが
幼い俺にはどうしても我慢できそうになかった。
「うあぁあああぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
俺は大声で泣き始めた。涙が止まらなかった。
こすってもこすっても悲しみと共に溢れて来る。
もはや俺にはどうしようもなかった。
泣き始めた俺を見た父さんの手の力が緩んだ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥そうか」
父さんは力なくこう呟いた。そして、俺を抱きしめた。
「待たせてごめん‥‥‥‥‥‥怖かったよな‥‥‥‥‥」
そして右手で頭を優しく撫でた。そして気付いた。
父さんも俺と同じで怖かったのだ。
俺のせいで父さんが危ないのではと思ったように
父さんは俺自身の不幸が道中に俺を襲うのではないかと
不安で不安で仕方がなかったのだ。
「でも、お父さんを
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