第40話 暗闇の中を漂う君へ
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た。
父さんはゆっくりと目を開けた。
「その時は風はほとんどありませんでしたが
今日は風が吹き荒れていて、飛んできた木の枝とかで
大怪我を負ってないかが不安で不安で‥‥‥‥‥‥‥」
そうして父は黙り込んでしまった。
二人もしばらく父さんに声をかけることが出来なかった。
パンパン!
奥さんは場の空気を切り替えるように手を叩いた。
「さぁ、悲しい話はそれぐらいにしてお昼を食べてしまいましょう。
ご飯は温かいうちに食べた方が美味しいですから」
そして、父の方を向いた。
「ジェーンちゃんも大きくなってるんだから
そんな簡単に怪我はしませんよ。きっと」
奥さんは微笑みながら言った。
ガタガタッ!バンバン!ガタガタガタンッ!
音を立てて揺れる窓の騒音の間にドアを叩くような音が聞こえた。
三人はそれに気付き、ドアの前まで急いで向かった。
そして、一番早く着いた父さんがドアノブに手を掛けてドアを開けた。
ギィ‥‥‥ ブオオォォォォオオオッ!!
開けた瞬間に、隙間から風が吹き込んできた。
しかし、そんなことを気にせずに父さんは更にドアを開いた。
「あの、すいません」
ドアの前には、この家のすぐ近くに住む男が立っていた。
正直、三人共ジェーンが来たものと思っていたので
来たばかりの男でも見て分かる様なガッカリ感がそこにあった。
「‥‥‥‥どうしたんですか?」
気を取り直して、父さんは男に訊いた。
「いえ、大した用ってワケじゃないんですけど‥‥‥‥‥」
そう言った直後、黄色いものが男の後ろから頭を出した。
フードを深く被っていて顔をうかがうことは出来ないが
この町にこのレインコートを持つ子供は一人しかいない。
「この子が家の前でずっと立っていたので‥‥‥‥」
ブオオォォォォォォォオオオオオッ!!
吹き荒れていた嵐の威力がさらに増して
レインコートのフードがとれて顔が露わになった。
そこにあったのは、今日の朝にドアを開けた後を最後に
家の中で帰りを待っているはずの女の子の顔だった。
「ジェーンッ!!!」
三人は驚きのあまり声を上げた。
俺はそれに驚いて頭をもう一度引っ込めた。
「ジェーン‥‥‥‥」
父さんがもう一度俺の名をつぶやきながら
俺の前に来て、片方の膝を付けて俺の顔を見た。
「ケガは‥‥‥‥‥ないか?」
父さんは俺の身体を見回しながら訊いた。
顔にも、手にも、膝にも、怪我は見当たらなかった。
「‥‥‥‥‥うん」
俺は大きくうなずいた。
ギュウッ!!
その瞬間、父さんは俺を思いっきり抱きしめた。
暴風と豪雨で濡れて冷え切った俺
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