Vivid編
第一話〜『おはよう』〜
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理解し、その違和感の原因に思い当たると、彼女は咄嗟に俯き気味なっていたその顔を上げる。
「――――」
その光景に息を飲んだ。
ベッドに横たわる青年。ヴィヴィオがパパと呼ぶ彼――――ライ・ランペルージの唇が少しだけ動いているのだ。
それを皮切りに瞼が薄らと上がり始める。
ゆっくりと、だが確実に開いていくその目は確かな光を宿し、それが生理反応ではなく確固たる意識下の行動であることが伺える。
「ぱ…………ぱ?……」
口から掠れそうな声が零れる。喋ることはこんなにも難しいことであっただろうか、とヴィヴィオは呆然とし始める頭の中で自問する。
そんなヴィヴィオの言葉が耳に届いたのか、ライは瞼と同じように首と視線をゆっくりと動かす。
ほんの少し傾ける程度、首の向きを変える。そして部屋に射し込んでくる夕日の光が眩しいのか、それとも定まりにくい焦点を合わせ始めたのか、ライの眉間に少しだけしわが寄る。
「――――」
そんなライに見つめられている当人は、文字通り息を呑む思いをしていた。
それは不安からくる緊張。
だが、当人も何故不安を抱いているのかは分からない。ライが目覚めたことに歓喜の感情が内心で渦巻いているのは確かである。
ならば何故、自分はこんなにも何かを怖がっているのか。その疑問は耳に届いた言葉で氷解した。
「――――――おはよう…………ヴィヴィオ」
「――――あ」
いつの間にか解いていた手を頭に乗せ、『約束』を口にするライ。
寝たきりであった為に口の中はもちろん喉も乾燥し、その声は掠れていた。だがそんな声でも、発されたその言葉はするりと耳に入り、心と身体に温もりとなって広がる。
(怖かったのは…………忘れられることだ)
自身の中でその恐れもなくなると、ヴィヴィオはポロポロとその両の瞳から雫をこぼし始める。
「あ、あぁ……お、はよ……ぱ…ぱぁ……」
今自分はちゃんと言えただろうかと不安になりながらも、彼女は溢れ始めた感情を抑えることなく発露させる。
嬉しくて、安堵して涙を流す。
その涙にどれだけの感情が乗せられているのか。
それを察することは待たせていたライには理解できない。だから、彼女の『パパ』としてライは今できることをする。
「ただいま」
年単位で動かしていなかった為、筋肉が痛みを発し悲鳴を上げる。だがそれがどうしたと内心で突っぱね、緩慢な動作ではあるがライはヴィヴィオを抱き寄せてやる。と言っても精々頭を自身に近付けさせてやるぐらいしかできていないのだが、それを察したヴィヴィオはライに抱きつくように体を寄せた。
「よかった……よかったよぅ…………」
溢れる気持ちに歯止めが効かない。だがそれは決して不快なも
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