Vivid編
第一話〜『おはよう』〜
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珍しいものである。そして先天性のものと後天性のものがあり、前者は遺伝的なものがほとんどで後者は目の損傷による後遺症が主であったりする。
そして部屋に入って来たこの少女、約三年以上前にこの部屋に眠る青年に助けられた彼女――――高町ヴィヴィオの瞳の色は先天性のものであり、ある特殊な事情故であった。
彼女は部屋に入ってくるなり、背負っていた学生鞄を下ろし花瓶などが置かれているボックスにもたれさせる様に床に置く。
「よいしょ」
部屋に備え付けの丸椅子を一つベッドの傍に置き、座ると彼女は慣れた手つきで青年の手を布団から出し、両手で包むように彼の手を握った。
「パパ、今日も来たよ」
一言そう言うと、ヴィヴィオは今日あった事を話し始める。楽しかったこと、授業で難しかったこと、新しく知ったこと等など。それは毎日のなかで特筆すべきような点など何もない、当たり前の日常であった。だが、ヴィヴィオはそれを誇りに想うように伝えていく。それは未だ眠る彼が命をかけてヴィヴィオに与えた大事なものであるのだから。
「――――う〜〜ん、と…………えっと……」
絶え間なくしゃべり続けたことでネタ切れになってきたのか、ヴィヴィオの言葉が途切れ途切れになり始める。
「うん。今日も一日、ヴィヴィオは楽しく過ごせました!」
そう言って彼女は話を締めくくった。
そこで一旦、彼女は青年の手を離すと花瓶の水を変えるため、それを持って廊下に出る。手際よくそれを終えると、日が傾いてきたことで少しだけ冷えてきた空気を遮断するために窓を閉める。そして最後に座っていた丸椅子を元の場所に片付けると、学生鞄を背負い直し再び青年の手を包んだ。
「また、明日……おやすみなさい」
入室してから終始笑顔であった彼女の表情がここで初めて曇った。それは何かを耐えるような苦い顔。もう青年が起きないのではないかという不安と、何もできない自分の悔しさから来る寂しさだ。
(きっと…………きっと言ってくれるよね)
内心で願うように語りかけるヴィヴィオは、瞼が熱くなるのを感じ咄嗟に目を瞑り、下を向く。溢れ出そうな雫を必死に押しとどめ、気丈にも笑顔を浮かべようと苦心する。
そして何とかその熱が引いてきた時に、彼女は自分の手の感触に気付いた。
感じたところに目を向けると、両手で包んでいた青年の手を力一杯握っている自分の手が見えた。
「あ、あわわ」
堪えるために無意識に力を込めてしまっていたと察すると、彼女は慌てて手の力を緩める。
「……あれ?」
すると力を緩めた時に彼女はもう一つのことに気付く。自身がもう強く握っていないこともそうだが、何故自身の手が圧迫感を“感じている”のか。
すぐには把握出来なかった違和感。それを
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