第十五章 忘却の夢迷宮
第九話 身体は剣で出来ている
[6/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ッ!!
その全ては標的から生み出される炎の壁に融かされ消し飛ばされる。
都合十回目の結果に落胆する暇もなく、振るわれた剣から生まれた炎を甲板を転がるようにして何とか回避する。
「ま、ったく―――規格外にも程がある」
士郎は“炎の魔人”とでも言うしかない化物となったワルドを睨み付ける。
戦闘を開始してからまだ五分も経ってはいないが、既に士郎は追い詰められていた。
触れるどころか近づくだけで燃えてしまう程の熱を常に放射している相手に近接戦は不可能。だからといって遠距離から弓で攻撃を仕掛けても炎の壁に遮られ未だ一度足りとも攻撃は通っていない。逆に相手の攻撃は避けたとしても余波の熱風に全身を炙られ確実に負傷を負う。
更に―――。
「―――魔力も限界か……」
士郎はこれまで既に宝具を三つも投影していた。
干将莫耶は士郎の投影できる宝具の中でもコストパフォーマンスに優れているが、他の二つは宝具の中でも上位に位置するものであった。更にこれまで矢として放った魔剣も宝具に及ばなくともそれなりの業物。それだけに消費される魔力は多く、既に士郎の残存魔力は底を尽き始めていた。
「……このままではジリ貧だな」
赤く焼け爛れ、腫れ上がった手。
動かす度に酷い激痛が走るが、痛みに顔を顰めることなく剣の柄を強く握り締める。
追い詰められているが、士郎は欠片も不安が混じっていない瞳でワルドを睨み付けた。
gaa、aaaa…………
巨大な炎剣を片手に、肩で息をしながらこちらを睨みつけてくるワルド。息をする度に、その口や身体のいたるところから小さな炎が飛び出してくる。
敵も限界が近い。
そう直感した士郎は、一瞬の思考の後、残り僅かな魔力を全て魔力回路に叩き込んだ。
「―――投影、開始」
身体が削られるような痛みが全身に走るが、歯を食いしばり耐える。
臓腑が炎ではなく己の魔力で焼かれる中、数十本の剣の全ての工程を完了。
「―――工程完了。全投影、待機」
魔剣、聖剣―――宝具に及ばなくとも、その全てが耐熱に関しては一級品。
生半可な火力では溶かすどころか熱する事さえ難しい業物であった。
それが数十本、士郎の背の空中に浮かぶ。
「ふぅ……―――いくか」
小さく吐息を吐き出し、一気に士郎は駆け出した。
一歩目でトップスピードに入る。
人、どころか獣でも成し得ない速度を魔術と体術により生み出し。
それを更に“ガンダールヴ”の力で後押しする。
―――■■■aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ