第十五章 忘却の夢迷宮
第九話 身体は剣で出来ている
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ちます。それが、彼を愛すると決めたわたくしの決意です。その結果が、彼の死とわたくしの心の死んだとしても、その決意は変わりません」
未だ不安気に涙を流しながらも、グッと口元を噛み締めて何かを決意したタバサの様子に安堵の息を吐いたアンリエッタは、不意に今まで黙って見ていたジョゼフへと顔を向けると、ニッコリと笑いかけた。
「この覚悟を聞いても―――あなたはまだ気楽だと言えますか?」
―――火―――炎とは、気体が燃焼し熱と光を出す現象である。
そこには硬さや重さはなく、言うなれば気体の一種だ。
触れて火傷をする事はあるが、それを掴むことは出来ない。
そのため、押し付けられれば火傷をする事はあるが、押しつぶされる事はない。
そう―――その筈だ。
しかし、これは違う。
「―――ッグ、アアアアアアアアあああああああッ!!?」
これは―――重く―――硬い―――。
受け止める事は考えない。
初陣の少兵の如く無様なまでな大げさな動きで身体を仰け反らせる。
常に敵の攻撃を紙一重で避けていたのが嘘のようなていたらく。
しかし、それも止む無し。
それ程までに、これは危険であった。
―――“炎の剣”
一言で言えばそうだ。
全長三メートルはあるだろうか。常に揺らめき、確かな姿を取ることはないが、柄と刀身は何とか見て取れる。
剣である。
ただし、それは全てが炎で出来ていた。
柄も、刃も、何もかも、その全てが桁違いの炎で出来ている。
それこそ、この船を燃やし尽くすだけの熱量を内包しているだろう
だからそれが振るわれる度に、余波だけで辛うじて形を保っていた船が崩れていく。狂乱の声とともに乱雑に振るわれる炎の剣。その刀身がかすりでもすれば、例えそれが“固定化”を掛けられた甲板であったとしても炭どころか灰も残らず文字通り燃え尽きてしまう。
それだけの熱量。
例え大きく飛び離れてその刃から逃げ果せられても、熱せられた風圧は避けることは不可能。
炎の剣が振るわれる度に高温に熱せられた風圧に肌が炙られ、既に全身は軽度の火傷を負っている。
動く度に全身が引き攣られる痛みを訴える。
焦げ付いた髪からタンパク質が焼ける独特な臭気が漂う中、喉が焼かれるのも構わず大きく息を吸い裂帛の気合とともに矢を射る。
一呼吸のうちに三射。
その全てが宝具に及ばなくとも並の強度ではない魔剣の類。
それも炎に耐性を持つ魔剣である。
しかし、
―――Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
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