第十五章 忘却の夢迷宮
第九話 身体は剣で出来ている
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け寄ろうとするが、一瞬向けられた士郎の目を見て踏みとどまった。
まだ、終わっていないことに気付いて。
士郎はワルドを肩から下ろすと、最早船の形を保っていない燃え盛る固まりへと身体を向けた。
同時に、アンリエッタたちの視線もそちらへと向けられる。
燃える炎の奥―――異様な魔力の揺らめきが大気を揺らす。
“火石”が爆発するのも時間の問題であると、その場にいた者たちは本能的に悟った。
数秒か数十秒か、十分はもたないだろう。
燃え盛る炎を見る者の心に絶望が過ぎる。
この距離では、どうあっても逃げきれない。
絶望からくる寒気がその身体を覆う刹那―――
「―――投影、開始」
光が溢れた。
光が生まれた中心に向けられる視線。
その先には、士郎がいた。
士郎の左の掌が輝いている。
“ガンダールヴ”が輝く。
思い浮かぶものは、かつて見た一振りの剣。
―――創造の理念を鑑定し、
現存する剣の中、最上級の一振り。
―――基本となる骨子を想定し、
それは、極東の国の神話で語られる剣であった。
―――構成された材質を複製し、
極東の神話の中、様々な使い手の間を渡った剣。
―――制作に及ぶ技術を模倣し、
それは、様々な別名を持つ剣でもあった。
―――成長に至る経験に共感し、
そんな中、神話の時代、退治された竜の尾から現れた剣は、とある英雄の手に渡った。
―――蓄積された年月を再現し、
その英雄は、その剣をもって野火の難を払い生き延びたという。
―――あらゆる工程を凌駕し尽くし――――
それは、エクスカリバーと同じく、自身の手には余るものであった。
だが、今なら、今ならば―――それすらこの手に掴んでみせようッ!!
ここに、幻想を結び剣と成す――――ッ!
燃え盛る船だった炎の塊が膨れ上がる。
周囲の大気ごと燃やし尽くしながら迫るそれは、地獄の顕現であった。
逃げることは不可能。
防ぐことは更に不可能。
絶望する気力すらわかない程の絶対の破壊に満ちた炎を前に、士郎は立つ。
熱風が吹き寄せる。
この身体となった士郎には何の影響もないが、他の者が当たれば焼け焦げてしまうだろう。
士郎は、右手に握った剣を前へと向けた。
すると、周囲を焼き尽くしながら迫る熱風がまるで避けるようにしてシルフィードから逸れてしまう。
だが、安心する間もなく、本体が迫ってくる。
炎の固まり。
眼前に迫る地獄を前に、士郎は剣を構える。
大きく身体を逸らし、剣を腰だめに。
そして、薙
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