第十五章 忘却の夢迷宮
第九話 身体は剣で出来ている
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男は、静かに、言葉を発することなく、目の前に立つ炎を纏う男を見る。
狂気に陥っている筈の男の足が、動揺するように僅かに下がる。
光が広がる直前までは、確かに甲板に焼け焦げた姿で転がっていた。
それが、光が収まると何事もなかったように立っている。
服に焦げ跡一つついていない。
だが、それが理由ではない。
男が―――狂気に落ちたワルドを動揺させたのは、その身体から放つ“力”であった。
触れるだけで切り裂かれそうな、そんな力だ。
だが、動揺は一瞬。
直ぐにワルドは炎を纏い突撃する。
どう変わってもワルドのやることは変らない。
その身から心から溢れる炎で全てを焼き尽くすだけ。
叫びとともに炎の剣を振り下ろす。
鉄さえ蒸発させる熱量で出来た剣を受け止めるものなどこの世には存在しない。
男は動かない。
勝利の確信に、歓喜の雄叫びが口から溢れ―――
「―――もう、いいだろう」
―――収まった。
光る左手で燃え盛る炎の剣を掴んだ男が、ゆっくりと右腕を振りかぶる。
数百度を越す熱風が周囲に吹き荒れているにもかかわらず、男には何の影響が見て取れない。
ワルドは咄嗟に離れようとするが、どれだけ力を込めても男の手から剣は奪い取れなかった。
―――aaaaaッ!? aaaaaaaaaaaa!!!!
駄々をこねる子供のように暴れるが、男はピクリとも動かない。
―――aaaaaッ!
どれだけ叫んでも、暴れてもどうにもならない。
剣から手を離し、逃げ出そうとするワルドであったが、最早全てが遅かった。
「……今は、休め」
男の―――士郎の拳が振り抜かれる。
ワルドの胸の中央。
士郎の槍により穴があき、炎が溢れるそこに、士郎の拳が打ち込まれ―――背中を突き抜ける。
ッ!? aaaaaa……。
突き抜けた士郎の拳には、赤い石が握られていた。
赤い石―――“火石”は所々罅割れ、チキチキと甲高い音を響かせ今にも爆発しそうな様子であった。
士郎は“火石”から手を離すと、ワルドの身体から腕を引き抜き、倒れかかってくるその身体を抱える。
そして甲板の上に転がり段々と甲高い音を高くする“火石”に背を向けると、ワルドの身体を肩に担ぎ駆け出した。
空間転移並の速度で舷縁の縁に足を掛けると、一瞬で空へと舞い上がった。
そして数百メートル先で様子を伺っていたシルフィードの背中に飛び乗ってきた。
「きゃんっ―――なのねッ!!??」
一瞬大きく揺れたシルフィードの身体であったが、直ぐに落ち着いて安定を取り戻す。
「し、シロウさん……」
「……シロウ」
アンリエッタとタバサが、士郎に駆
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