第十五章 忘却の夢迷宮
第九話 身体は剣で出来ている
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あなたは救った。
たくさんの人を。
ただ、あなたはそれを見ていないだけ。
ほら、今も聞こえるでしょ。
あなたを呼ぶ声が。
感じるでしょ。
あなたの足元に、そっと寄り添っているものを。
全てを救いたいだなんて、何時も無茶なことを言うけど。
そんな事できるわけないでしょ。
誰しも一人でする事には限界があるわ。
そして、人にできることにも限界がある。
でも、あなたが気付けば、もしかしたら“奇跡”が起きるかもしれないわ。
自分が一人じゃないことに気付いて、それを受け入れて、それでも救おうとするなら、きっと“奇跡”はあなたの力になる。
ねぇ、シロウ。
わたしは、ずっとあなたと一緒にいるよ。
何があっても、ずっと傍にいて見守ってあげる。
あなたが望むのなら、何度だって“奇跡”を起こしてあげる。
だから、目を開けて。
足元を見てごらん。
そこに、“奇跡”がある。
そこに、“救い”がある。
あなたが決して間違っていなかった証明が、そこにある。
だから、目を覚ましなさい。
わたしの愛しいシロウ……。
…………………………………………
……………………
…………
……
何かに呼ばれた気がした。
高熱に爛れて張り付いた瞼が開いていく。
意識はなく、しかし、何かに導かれるように視線は足元へ。
最早一メートル先も見えない視界の中、燃え盛る甲板の上にありえないものが映った。
花、だった。
綺麗な。
美しいとしか言いようのない花。
―――青薔薇。
―――白百合。
二輪の花。
燃え盛る炎の中にありながら、涼しげに緩やかにその身を揺らしている。
焼け爛れ、とうに機能を失った筈の鼻腔を、甘い香りがくすぐる。
何故か、涙が溢れていた。
余りにも美しかったから?
余りにも香しかったから?
違う。
そうじゃない。
確かに感嘆するほど美しい。
確かに陶酔するほど香しい。
しかし、そうじゃない。
そうではない。
ただ、余りにも眩しかった。
その有り様が。
その存在が。
あまりにも、綺麗だったから。
だから、手を伸ばした。
導かれるように。
誘われるように。
肘から先がない事は忘れていた。
どうあっても触
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