第27話
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董卓か」
「……」
音々音とは違い袁紹等三人は表情にこそ出さないが、一様に董卓の事が気がかりだった。
そもそも董卓が暴政を働いてる証拠が無い。全ては唯の噂という可能性もありうる。
史実において専横を極めてきたとされる董卓。しかしこの時代は袁紹の知識と大きく差異がある。
張三姉妹が良い例だ、黄巾の乱こそ起きはしたものの、張角は扇動などしていなかった。
その例を交え此度の問題を考える。
火のないところに煙は立たないように、原因が無ければ董卓が暴政しているなどという噂は立たない。
ではやはり暴政しているのではないか? 否、それ以外にもこの噂が立つ原因がある。
なんてことはない――ただの嫉妬だ。
黄巾を討伐してきたとしても、董卓は所詮地方豪族の身である。
それが他諸侯を差し置き、相国の立場となるのは面白いものではない。
ぽっと出の派遣社員が、正社員を抑えて社長に抜擢されるようなものだ、当然反発する。
そしてこの時代の者達は血気盛んだ、対象を排除することに躊躇しないだろう。
董卓が暴政を働いていると噂を駆け巡らせたのは、大義名分を得る為――そう考えると辻褄が合う。
もしそうなら、一番の犠牲者は間違いなく董卓である。彼女は地方豪族だったのだ。たとえ諸侯が反発すると見越していたとしても、相国となることを断る術は持っていないだろう。
今頃はその頭を、董卓軍の知である賈駆と共に頭を抱えているかもしれない。
「主殿は董卓をご存知で?」
「昔、遠目だが見たことがある」
袁紹が幼少の頃、父に連れられ洛陽の宴に参加したときの事だ。
各地の豪族に紛れ、壁の花になろうとする少女が気になった。父から聞いた董卓と言う名に驚き、彼女を観察したのだが――俯くように下に目線を下げ、ちびちびと料理を口にするその姿からは、内向的思考――引っ込み思案なように感じられた。
憂いを帯びてるような雰囲気は独特で、一言で表すなら『薄幸の美少女』といった印象だ。
将来大陸に影響を与えるかもしれない人物――董卓をさらに観照しようとした袁紹だが。
彼の視線に気が付いた董卓の側に居る眼鏡の少女にきつく睨まれ、断念していた。
当時の記憶では暴政を働く人物には思えない。勿論、時が立ち変貌した可能性も、彼女自身が誰かの傀儡である可能性も、袁紹が見破れなかっただけで本質が違う可能性もある―――とはいえ。
「もしも噂が虚偽であった場合、我は諸侯の下らん嫉妬に付き合う気など毛頭無い」
「……麗覇様」
「フフッ、そうでしょうな」
「麗覇様なら、そう言うと思っていたぜ!」
袁紹が利だけを取る人間なら迷わず董卓討伐に出ただろう。だがそんな人間であったなら此処まで慕われはし
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