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黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 正体
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の僕たちの姿は、しかし歪んだように靄がかかり一見崩れた波紋のように見えた。
 それは普段は漆黒のこの羽織と笠、魔法道具【黒霧】の透明化能力によるものだ。
 まぁ透明化などと銘打たれた能力ではあるが、実のところ辺りの風景を反射し投影してるだけなので突っ立っていれば違和感ばりばりだし、動いていても先ほど小川に写ったように空間が揺れているような奇妙な跡は残ってしまう。
 それでも遠目に見る分には十分な効果を発揮し、討伐系の依頼の際には重宝しているしろものだ。

「というか二人とも、案の定索敵に時間がかかってるとはいえもう少し雑談を控えること」

 はっ、として黙ってうなずく二人。僕自身二人の質問に答えておきながらいまさらな気もしたが。
 恐怖も緊張もあるだろう、だが時間というものはそれらを奪っていく。
 それほど時間がたっていない。それは僕個人の感覚であり、実際はすでに一時間近く経過している。
 最初は大人しかった二人が、さっきのようにどうでもいい話題を振ってきたのは動かない状況を紛らわすため。どこにいるかもわからない敵を探す、そんな経験が無いであろう二人に何時間も緊張感をもち警戒を怠るな、などと野暮なことを言うつもりはない。背負われているとはいえ、できる限り衝撃が少ないように走っているとはいえ、流石に疲れもあるだろう。
 宿に戻る……のは出入りに問題があるから却下。その辺りの目立ちにくそうな木の陰でしばらく休憩したほうがいいかもしれない。

「…………」

 そう提案しようとした瞬間、今までと違った違和感を感じ一時間ぶりに足を止めた。
 怪訝そうな雰囲気が背後から伝わってくる中、なにかが正面に来るように体の向きを変えじっとそちらを見据える。

「……二人とも、雑談を控えろって言った瞬間にあれだが、向こうから何か感じないか」
「なにか、ですか? ……私は、なにも」
「私も何も感じないわね。あんたには見えてるわけ?」
「見えるというよりは感じる、だな。近づいてみよう」

 再び枝を蹴り、移動を開始する。
 数百メートルも進んだ頃だろうか、ドラゴンスレイヤーとして感覚が優れているウェンディちゃん、続いてシャルルもその変化を明瞭に感じたらしく、薄れていた緊張を取り戻し始めていた。
 違和感の正体は冷気、一方向から不自然な冷たい空気が漂ってきていたのだ。
 まだ寒さを感じる時期にしては早すぎるし、突然限定的な方向からだけというのも不自然だ。
 ならば思い当たるのは、雪の魔法を使うという竜の話。ここ一時間走り回ったかいがあったというものだ。

「あっ……!」

 僕の足が止まるのと、背後でウェンディちゃんが声をあげるのは同時だった。

「ウェンディちゃんも見えたか」
「……はい」
「なに? どうしたのよあ
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