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黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 正体
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め行動を始めるという節のメッセージを渡し、泊まっていた部屋の窓から直接飛び出してきた。まだ僕たちが宿の中にいるよう見せかける目的でそうしたのだが、監視ラクリマに引っかかっていたりはしなかっただろうか。魔力を使う監視ラクリマ、その大まかな位置はよむことができたので避けてきたつもりだが、その分野に特化しているわけでもないので確実とはいえない。
 幸いなのは森の中に監視ラクリマが無いこと。闇ギルドの実力は未知数だが、ドラゴンに過信し町の外にはそこまで警戒していないといったところか。
 そして最後に、

「ちょっと早すぎないかしら! ぶつかったりしたらどうするのよ!」
「シャルル、心配しすぎだよ」
「ウェンディちゃんの言うとおり、心配しすぎだ。僕がそんなへまするわけないって」

 小さな声で叫ぶ、という器用なことをしているシャルル、そしてそれに答えるウェンディちゃん。この二人の存在である。
 二人は僕のスピードについてこれるはずが無い、ならばどうするか。簡単なこと、僕が二人を背負って一緒に移動すればいいだけの話だ。速度は多少落ちるとはいえ、子供と猫を背負って移動するくらいどうってことない。
 とはいえ、体の頑丈さがまるで違う僕と彼女たち。ぶつけるわけ無い、口ではそういっても気を使って走ることは避けられないのだ。

「ならいいけど。それにしても、あんた滅竜魔法以外にもいろいろ使えたのね」

 シャルルが言ったのは、先ほど僕が行動するに当たって武装を取り出したことを言っているのだろう。
 現在の僕の武装は、この二人と出会ったときと同じ和服の上に笠と羽織、そして身刀を刀身に用いた刀というもの。単に噂を追ってきただけの昨日は、どれも装備していなかった。
 ならばどこから取り出したのかというと、滅竜魔法ではない魔法【換装】を使い、異空間に入れておいたのを取り出したのだ。

「魔法空間に入れたものを自由に取り出せる魔法ですっけ? 複数の魔法使えるなんて始めて聞いたわよ」
「使えるって云ったって付け焼刃だよ。劣化してて戦闘中に出し入れするなんて器用なことはできないし、そんなに多くのものをしまったりもできない」
「でも、付け焼刃で魔法が使えるなんてすごいですね。このマントと帽子もクライスさんの魔法ですか?」
「これは違うよ。これ自体に魔法が付与(エンチャント)されてる魔法道具」

 マント――正確には打裂羽織(ぶっさきばおり)といって帯刀しやすいよう工夫されたいわば東方版のマントであり、帽子といわれたのは三度笠(みどがさ)というもので、塵や風から顔を守ってくれるこれまた東方のものだ。
 これは旅の道中手に入れたものだが、ただの羽織と笠ではない。
 木々の境、数メートルほどしかない小川の上を飛び越える。通り過ぎる刹那はっきりと写るはず
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